春季キャンプも終わり、ここからチームは本格的に実戦モードに入っていく。コメントにもあるように、キャンプ中はカープOBの大野豊氏も開幕投手の最右翼として森下暢仁の名前を挙げていたが、ここへきて大瀬良大地が第一候補として急浮上。さまざまな動きがあった春季キャンプを、大野氏が投手目線で振り返る。

キャンプ中も安定感のある投球を見せていた森下暢仁投手。

◆白熱する開幕投手争い。キャンプ序盤の時点では森下が最右翼

 新型コロナウイルスの影響で春季キャンプが無観客で実施されました。さまざまな規制を受けながらのキャンプとなりましたが、選手たちの表情を見る限り、調整が順調に進んだと見て良いでしょう。

 それにしても今年は、例年と比べて大きな変化を感じさせるキャンプとなりました。二軍の宮崎キャンプにリーグ3連覇に貢献した投手が相当数いましたよね。ということは一軍の沖縄キャンプに、いかに若手投手がたくさんいたのかということの現れでもあるわけです。

 もちろんドラフト上位の栗林、森浦、大道をはじめとした若手投手に期待したいところですが、どこまで機能するのかはまだ未知数な部分もあります。その意味でも3連覇に貢献したメンバーの奮起も促したいところですね。

 昨年数字を残した森下、塹江、ケムナに関しては、とにかく油断をしないことです。昨年ある程度数字を残したから「これでいける、大丈夫」ということではなく、またゼロからのスタートと考えて投球に磨きをかけなければなりません。球の質にこだわるのか、変化球の球種を増やすのか。相手も研究してくるわけですから、昨年以上のものを出せるように、しっかりと考えながら調整を続けてほしいですね。

 森下で言えば、1月の合同自主トレで前田健太からスライダーやツーシームの握り方、投げ方を習っていましたよね。昨年まではカットボールを効果的に使っていましたけど、スライダーを試合で使えるレベルにまで持っていけば投球の幅がかなり広がります。

 直球が150キロとするならば、一番遅い球は100キロそこそこのカーブ。昨季までの中間球はチェンジアップ、カットボールでしたが、そこにスライダーなどが加われば、さらに緩急を活かした配球ができるようになるでしょう。

 ただ私自身も経験があるのですが、新しい球を覚えようとすると、その球だけに執着をして他の球種が疎かになることもあるんです。そうならないためにもスライダーやツーシームの習得だけにこだわるのではなく、持ち球の質の向上にも注力してほしいですね。あれだけの活躍を見せた投手なので他球団も徹底的にデータを分析していると思いますが、彼の持ち味をマウンドで出すことができれば今年もそうそう打ち込まれることはないでしょう。