◆サンフレッチェというクラブに感じる一体感

― チームづくりに向けて、現状の手応えとしてはいかがでしょうか?

 「たとえて言えば、チームづくりとは『山を登ること』なのかもしれません。山の登り方は決して1つに決まっているわけではありません。どのようなルートで山の頂へと登っていくのかは、さまざまな状況を鑑みながら、自分たちが考えていかなければいけません。サッカーの場合は、自分たちが目指すサッカーに向けて、今在籍している選手たちが培ってきた経験も考えて、チームづくりを考えるべきでしょう。また『昨年の苦しさを経て、選手たちがどのような気持ちを抱いているのか』『どんな選手がいて、どんな組み合わせが、チームが持っている力を最大限に発揮することができるのか』ということを、手探りで考えている状況です」

― キャンプではハードな練習を選手たちに課していましたが、どういった意図があったのでしょうか?

 「今季はJ1のチームの中で、最も遅い始動だったこともあり、開幕戦を迎えるまでの時間との戦いは、相当シビアなものでした。どのように開幕戦を迎えるべきか、コーチングスタッフと相談する中で、まずは『90分戦うことができる状態まで選手たちのコンディションを持っていくこと』、そして『シーズンを戦う上で守備が崩壊しないよう、自分たちが立ち返る守備を構築した上で、ピッチに立たせること』を開幕までに、間に合わせないといけない事項だと考えていました。あれもこれもと考えてしまうことで、全てが中途半端になってしまうことが最も良くないと思っていました」

― 就任されてから、サンフレッチェというチームの伝統を感じられたことはありましたか?

 「現場の選手の力はもちろん、現場に近いフロント、そして営業面でクラブを支えるビジネススタッフも含めて、クラブの一体感があるチームだと思いました。資金が潤沢にあるクラブではないのにも関わらず、素晴らしい実績を残すことができたのは、そういった面も関係していると思います。言葉で表現することは難しいですが、限られた条件の中で、『やるべきところ』、そして『切り捨てるところ』がはっきりしているように思います。効率よく、現場が力を発揮するように、積み上げてきた結果なのだと思います」(続く)