◆4番の進塁打は相手バッテリーからラッキーと思われる

 ただ、コンディション不良などもあり、数字はパッとしていませんし、内容もまだ“らしさ”を見せることができていません。

 ここで冒頭の話に戻りますが、つなぐ意識とか、右方向への意識はもちろん必要ではあるのですが、全ての打席でそういう考えでいると、正直打者としての怖さがなくなってきます。打席の中で考えることは大事ですが、考えすぎて自分のスイングができなくなっては元も子もありません。やっぱりアバウトな部分も必要になってくるんです。鈴木誠也に限っていえば、いっそのこと「お前に任せるよ」という意識で打席に送り出してあげることも良いかもしれません。

 過去、他球団の話ですが4番にバントをさせて話題を呼んだこともありました。そうした奇をてらう作戦は、“絶対にこの試合は落とせない”というシチュエーションのときくらいでしか使いません。打席内での制約をつけるのは他の打順だけでよくて、基本的に4番打者には「とにかく走者を返す」という目的をシンプルに達成するという意識で良いと思います。

 何度も言っているようにチーム打撃はもちろん大切ですが、4番が進塁打でチャンスを広げたとしても、相手バッテリーからはラッキーと思われてしまいます。「チームバッティングしてくれてありがとう」と。鈴木誠也クラスの選手になると、常に怖い打者でいないといけません。まずは自分の良さを出すことを一番に考えてプレーしていくことで、おのずとチームにも好影響を与えてくれることでしょう。

 今は投手陣が非常に好調です。ただ僅差の試合ばかりだと、だんだん後半になると苦しくなってきます。やはり野球は打てないと勝てませんから。一度どこかで打線がつながれば、それをきっかけに変わってくるはずです。そして、そこでは間違いなく鈴木誠也にキーマンになってもらわないといけません。2021年開幕まであと少し。気持ちの良いスタートを切れるよう、調子を上げていってもらいましょう。