◆レベルの高さを痛感したプロ初マウンド
育成選手として迎えた3年目の昨季は、プロ野球選手として大きく飛躍した一年となった。藤井黎來は、9月に念願の支配下登録を勝ち取ると、10月8日の阪神戦(マツダスタジアム)で一軍初登板を果たした。
「かなり緊張しました」と藤井自身も話す通り、一軍の雰囲気はこれまで経験したことがないものだった。同時に一軍のレベルの高さも痛感した。
「初登板の阪神戦、最初の打者が梅野(隆太郎)さんだったのですが、決め球にフォークを投げたんです。自分の中では、良いコースにいったと思ったのですが、打球はライト前へ。このとき、やっぱり一軍は違うなと感じました」
ただ、それ以降は三振を奪うなど、任されたイニングを見事に無失点に切り抜け、プロ初の登板を終えた。
「甘いボールも多かったので運もあったと思いますが、無失点で終えることができたのはよかったです」
2020年9月26日。藤井は念願だった支配下登録を勝ち取り、背番号は「121」から「58」に変わった。この吉報を誰よりも先に報告したのは、藤井をずっと見守り支え続けた両親だった。
そして10月になり、藤井のもとに一軍昇格の連絡が舞い込んだ。
「コーチから連絡があって、移動日明けから一軍に合流するぞと伝えられました。聞いたときは、めちゃくちゃうれしかったですね」
コーチには冷静を装い「頑張ります」と伝えた藤井だったが、電話を切ると喜びを爆発させたという。
2020年の一軍登板は3試合。ただ、3試合とはいえ、一軍の舞台で、打者を相手に投げた経験は藤井にとって大きな財産となっている。そして、その経験を今シーズンに生かしていく必要がある。
「今季は、昨年の一軍での登板数(3登板)は超えて、最低でも2ケタは投げたいです。そして、一軍の勝ちパターンの継投に入り、一年を通して一軍で必要とされる投手になりたいです」
藤井の最大の武器は140km中盤の力強いストレートと落差のあるフォーク。この球を磨き、背番号が軽くなって初めて迎える今シーズン、一軍ブルペン定着を目指していく。