翌年には東出から選手会長を受け継ぎ、グラウンドではショートからサードにコンバートされた。シーズン後には大きなニュースが、チーム内外を駆け巡った。梵氏自身に関してはFA宣言をせずカープに残留。チームとしては野村監督が退任。黒田博樹、新井貴浩がカープに復帰した。
カープ人気が過熱していくなか、梵氏は2015年シーズンに故障以外では6年ぶりとなる二軍降格を味わった。翌年はプロ11年目にして初の開幕二軍スタート。25年ぶりの胴上げの瞬間は一軍に帯同していたが、年間通じての出場はわずか7試合のみ。悔しさしか残らないシーズンとなった。
再起を誓って迎えた2017年も、二軍での代打が中心となるなど状況を打破することはできなかった。一軍での出番がないまま迎えた9月、ついにそのときは訪れた。「来季は戦力として考えていない」。大野練習場のクラブハウスで球団から告げられたのは、予想通りの非情な宣告だった。
現役にこだわった梵氏は自由契約を選択し、12年間在籍したカープを退団。その後は水面下で他球団への入団を目指し動いたが、色よい返事は聞かれなかった。刻々と時間だけが過ぎていくなか、家族のことも考え「4月、5月までに次の所属先が決まらなければ引退しよう」と考えていた。
●梵 英心(そよぎ えいしん)
1980年10月11日生、広島県出身。三次高-駒澤大-日産自動車-広島(2006~2017年)-エイジェック(2018年~)。2005年大学生・社会人ドラフト3巡目でカープ入団。2006年に新人王を受賞。2010年には打率3割(.306)をクリアし、43個で盗塁王、ショートとしてゴールデン・グラブ賞にも輝いた。2013年には選手会長に就任。2017年オフにカープを退団。2018年に社会人野球・エイジェックで選手兼コーチとしてプレー。2019年10月11日に現役引退を発表した。