苦戦が続くも、若手野手が台頭し主力と若手の融合が進むカープ打撃陣。逆襲の夏に向けて、キーマンとなる選手は誰か。カープOBの笘篠賢治氏が独自の目線で分析する。

今季、プロ初本塁打、初打点を記録した高卒3年目の林晃汰選手。

◆田中将大から本塁打を放った林と宇草の積極的な打撃

 交流戦は、投打の歯車がうまく噛み合わない戦いが続きましたが、野手陣に目を移すと、若手選手の活躍が目立ちました。その中で名前を挙げたいのが、高卒3年目・林晃汰と大卒2年目・宇草孔基の左打者です。

 2人の活躍を話すうえで欠かせないのが6月5日の楽天戦(マツダスタジアム)です。この試合の楽天先発は田中将大。注目度も高かった試合で、宇草はプロ初本塁打、林は今季2本目の本塁打を放ちました。宇草も林も、ファーストストライクを取りにきた田中将の速球を打ち返しました。称賛したいのはこの『積極性』です。

 一軍なので結果を求めないといけませんが、結果を恐れずに、しっかりと振る勇気と度胸を、宇草と林のスイングから感じました。一軍経験の浅い選手はこの積極性が大事です。思い切って自分のスイングをするなかでアジャストの確率を上げていくのが目指すべき形だと思いますね。そしてその確率を上げていくのは紛れもなく日々の鍛錬です。彼らの根底に、これまでファームでやってきたことがあるからこそ、一軍で結果が出せたのだと思います。

 そして、田中将というビッグネームに物怖じしない度胸の良さも評価してあげたいです。田中将に圧倒されるのではなく、絶対にこの投手から安打を打ちたいという思いを集中力に変えているようにも感じました。もちろん普段から集中して打席に立っていると思いますが、田中将との対戦においては、いつもと違った思いが体を動かしたようにも感じましたし、結果が出たことで自信にもつながったと思います。

 若手野手の活躍が目立つことで、今後気になるのは起用法です。いろんな意見があると思いますが、個人的には若手中心のオーダーというのは反対です。もちろん首脳陣の中には、結果を出した選手を起用してやりたい思いがあるでしょうが、実績のある選手の調子を上げる起用も考えていかないといけないと思います。

 例えば外野に関しては、鈴木誠也と西川龍馬は鉄板ですが、残りの1枠は、チームの中で調子を上げてもらわないといけない選手を優先的に起用すべきだと思います。投手を中心にした守り勝つ野球というテーマがあるなかで、優先したいのはやはり守備力。そう考えると、野間峻祥の出場機会をもっと増やすべきだと私は思います。野間は前述の6月5日の楽天戦でスタメン出場し2安打を放ちましたが、翌日の試合はスタメン落ち。起用の優先順位を考えて、一軍にいる選手の調子が上向く采配を心がけてもらいたいところです。