◆テロ事件発生。その時レッドソックスは

 私がアメリカに住んでいた2013年の春、ボストン・マラソンで爆破テロ事件が起き、大勢の死傷者が出る大惨事となってしまいました。

 その時、地元のメジャーリーグ球団であるレッドソックスは、緊急事態の中、街の復興に全面協力することをいち早く表明し、チャリティーオークションやチャリティーグッズの売り上げ、そして球団や選手たちからの寄付で、負傷者や犠牲者の遺族のために2億円以上の支援金をあっという間に集めました。

 それだけではありません。その年は最下位が予想されていたにもかかわらず、『BOSTON STRONG』というスローガンを掲げて勝ち続け、ポストシーズンに進出。数々の接戦を制し、なんとワールドチャンピオンにまで輝いたのです。

 上原浩治さんが胴上げ投手となり、捕手に抱きついたシーンを覚えている方もきっといらっしゃるでしょう。私はそのシーンを少し離れたニューヨークのスポーツバーで観ていたのですが、因縁のライバルといわれるヤンキースのお膝元の野球ファンたちも、その奇跡を温かく見守っていました。

 レッドソックスが物理的にも精神的にもボストン市民を救っている姿は、真のスーパースターそのものでした。私は純粋に野球ファンとして、この人たちはなんてカッコいいんだろうと感じ、この姿を日本の子ども達にも見せてあげたい、そうすれば野球離れもなくなるはずだと強く思いました。

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岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施。出身県の静岡ではプロ野球選手の県人会を立ち上げ、野球を通じた地域振興を行う。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。