スポーツジャーナリストの二宮清純が、ホットなスポーツの話題やプロ野球レジェンドの歴史などを絡め、独特の切り口で今のカープを伝えていく「二宮清純の追球カープ」。広島アスリートマガジンアプリ内にて公開していたコラムをWEBサイト上でも公開スタート!

 14日、カープは本拠地で中日に2対0で勝ち、今季初の4連勝をマークした。それでも借金は、まだ12。とりあえず、ひとつひとつ返済していくしかないだろう。

 14日のスタメンの平均年齢は約24.6歳。最年長が菊池涼介の31歳、2番目が野間峻祥の28歳だから、随分若返ったものである。

 最年少は林晃汰の20歳、続いて小園海斗の21歳(2人は同学年)。2人とも3割台の打率をキープするなど健闘している。

 前回のコラムでも述べたが、若返りには賛成である。今、種を撒いておかなければ、2年後、3年後には大変なことになる。佐々岡真司監督も多少の失敗には目をつぶる腹づもりだろう。

 しかし、若返りの先にバラ色の未来が待っている保証はどこにもない。1988年の阪神がそうだった。

 前年、最下位に終わった阪神は監督の吉田義男を切り、村山実を再登板させた。村山は若手の中野佐資、大野久、和田豊をレギュラーに抜擢するなど世代交代を急いだが、レギュラーに成長したのは和田だけだった。

 あるベテランは苦々しい表情でこう語ったものだ。「若返りをやりたいのなら、やればいい。しかし、自分たちだって生活がある。ポジションを与えている以上は結果も求めて欲しい。村山さんは若手にポジションを与えるだけで結果を求めなかった。だからチームはさらに悪くなってしまったんだ」。88年6位、89年5位。2度目の村山政権は、わずか2年で幕を閉じた。

 ポジションを与える以上は結果も求める――。これはチーム再建の鉄則である。

(広島アスリートアプリにて2021年7月19日掲載)

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二宮清純(にのみや せいじゅん)
1960年、愛媛県生まれ。明治大学大学院博士前期課程修了。株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。広島大学特別招聘教授。ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク 統括マネージャー。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグなど国内外で幅広い取材活動を展開。『広島カープ 最強のベストナイン』(光文社新書)などプロ野球に関する著書多数。ウェブマガジン「SPORTS COMMUNICATIONS」も主宰する。