カープのチーム成績を見渡したとき、得点力アップは巻き返しに欠かせない要素。12球団トップのチーム打率(.260・9月16日現在)を誇る打線が、より活きる戦術を、カープOBの笘篠賢治氏に聞いた。

攻撃のキーマンの一人となる小園海斗選手。

◆気になるのはチームの走塁意識

 9月16日現在でチームは最下位。厳しい戦いが続いていますが、一つでも上の順位を目指して、最後まで諦めない戦いを続けていってほしいところです。

 今回は、12球団トップのチーム打率を誇る、カープ打線の“得点力アップ”に必要な仕掛けについてお話したいと思います。

 ここ数試合を見ていて、気になったのはバントです。9月10日の阪神戦。1−1で迎えた5回裏、無死から大瀬良大地が四球を選び、野間峻祥が安打を放ち、小園がバントで送りチャンスを広げた場面がありました。

 この場面、結果的に得点にはつながりませんでしたが、小園にバントのサインを出したのは良かったと思います。もちろん打つことも大事ですが、小園には、こういった場面でしっかりとバントを決められるタイプの打者になってほしいですからね。

 しかし、9月12日の巨人戦では、1点ビハインドの8回裏、無死一塁の場面で打席が回ってきましたが、小園に代わり、ピンチバンターとして上本崇司が出てきました。小園は相当悔しかったと思います。レギュラーとして試合に出場する以上、小園はどんな投手が出てきても、バントを任せられるようにならないといけません。

 バントは場面によっては必要な戦術です。バントのサインが出しづらい打線は、相手からするとラクなケースがあるものです。もちろんつながれたらビッグイニングになりますが、得点差によってはバントのほうが嫌がられるケースがあります。小園には小技を含め、いろんなことができる打者になってほしいと思います。

 もう一つ気になるのがチームの走塁意識です。先週の盗塁はゼロ。後半戦に入ってからも合計8盗塁。もう少し足を絡めて攻撃を仕掛けていったほうがいいと思います。カープで守備走塁コーチ(2000〜2002年)をやらせてもらっていたこともあり、カープの走塁はやはり気になって見てしまいます。

 塁上を駆け回る“攻める”走塁は、カープ野球の伝統でもあるだけに少し寂しいですよね。単に盗塁を仕掛けるだけでなく、ヒットエンドランでランナーにスタートを切らせるというのも戦い方としてはありだと思います。

 選手任せではなく、ベンチからの指示で走らせて、結果ダメだったらそれでいいと思うんです。ランナーがスタートを切れば、投手を揺さぶることができます。特に好投手を攻略する際は、こういった仕掛けも必要になってきます。残り試合は、カープ本来の足を使った攻撃にも注目していきたいと思います。