両リーグ最短で60敗を喫し、借金が今季最多の17にふくらんだカープ。残り試合をどういうスタンスで戦っていくべきか、カープOBの笘篠賢治氏に聞いた。 

後半戦、いまだ勝ち星がない森下暢仁投手。

◆勝ちにこだわった采配を見せてほしい

 9月20日のヤクルト戦、2−2の引き分けに終わりましたが、勝ちきれない試合内容に思うところがありました。何よりも感じたのは、自力でのCS進出の可能性が消滅したなかで、残り試合をどういう方向性で戦うのかが見えてこないことです。

 20日の試合は、後半戦、勝ち星に恵まれていない森下暢仁に絶対に白星をつけてあげたい試合でした。5回表に石原貴規と菊池涼介の連続本塁打で2点を先制して、森下も完璧な投球でヤクルト打線を封じ込めていました。しかし、8回表のチャンスで追加点を逃すと、その裏に追いつかれてそのまま試合終了。試合展開を見る限り、ベンチワークが機能していないように感じました。

 今年は9回までというルールがあるだけに、選手起用も、ある程度は想定しやすいはずなんです。ただ、この試合の選手起用を見ていると、もどかしさを感じずにいられませんでした。

 一番疑問を感じたのは選手起用です。投手起用にしても、追加点の取り方にしても、この試合に関しては、「投手が抑えられなかった」「打者が打てなかった」という結果論で終わっているように感じました。結果が全ての一軍では、打者に自由に打たせるだけでなく、ベンチワークで得点を奪うなど、“勝ちにこだわった野球”をやらなければいけないと思います。

 若い選手が多いだけに、自由に打たせるメリットもあります。特に正隨優弥は、将来の右の長距離砲として期待が大きく、二軍で結果を残してようやく一軍に昇格しただけに、持ち味を存分に発揮してもらいたい気持ちはあります。しかし、自由に思い切り打たせているだけでは二軍と変わりません。どういう経験をさせて、どういう風に育っていってほしいのか。そういう首脳陣の意図を、もっと見せてもらいたいなと思いますね。

 3連覇の実績はもう過去のこと。どういう戦い方をしたら相手が嫌がるのか。チャンスをものにする確率を上げられるのか。もう一度、自分たちのやるべき野球を見つめ直してほしいですね。上位争いから離れているとはいえ、このまま最下位で終わるチームであってほしくはありません。

 チームへの期待が大きいぶん、苦言が多くなってしまいましたが、ポジティブな話題を出すと鈴木誠也です。現時点で首位打者に躍り出るなど、調子を上げてきています。状態が良いだけに、相手に勝負を避けられる打席が増えてきて、打ちたくても我慢しないといけないのは大変だと思います。ただ、今の鈴木からは、勝負を避けられるのは仕方ないと割り切って、ドッシリと構えている雰囲気を感じます。

 今の集中力があれば、首位打者争いだけでなく、本塁打王争いにくい込むことも不可能ではなありません。残り試合で鈴木がどんな成績を残してくれるか、楽しみに見守りたいと思います。