カープOBの笘篠賢治がカープ野手陣を徹底分析するコラム。今回は、捕手・會澤翼がもたらすチームへの影響力について取り上げる。※取材日は9月上旬。

攻守にわたり、存在感を示している會澤翼選手。

◆一つでも多くの勝ちにこだわり、残りの試合も頑張って欲しい

 8月29日の阪神戦で、會澤翼が一軍に復帰してからの戦いぶりを見ると、チーム全体が落ち着いた感じがしました。投手も安心して投げている印象を受けます。

 チームの中で一人だけ全景が見られるのは捕手だけ。そのなかで、配球も含めて全体が落ち着く立ち回りというのがあります。坂倉にしても、そういう捕手にならなきゃいけないということを感じているでしょう。會澤の復帰によって野手もそうだし、首脳陣も変わってきたように感じます。

 佐々岡監督もやっと『采配』というものをつかんできたように思えます。たとえばビハインドの展開のときにもスパッと投手を交代して、代打を送り込んで点を取りに行くなど、積極的な選手起用をみせています。

「追いついてくれよ」という選手任せのものではなく、勝っている展開でも代打で長野久義を出す、ディフェンスに切り替えることを見越して代走に上本崇司を出す。投手にしても早めの継投で栗林良吏につなごうとするといった采配です。シーズンは残りわずかですが、試合をつくっていくためにはこうすれば良いんだという〝ベンチが責任を取ることができる采配〟という部分が見えてきた気がするので、残り試合の戦いが楽しみです。

 とはいえ、現時点でのゲーム差からするとAクラス入りは厳しい状況です。一つでも上を目指すなら、カード勝ち越しを続けることが必須です。また火曜、水曜にあまり勝てていないのも気になります。まずはカード頭の火曜に森下暢仁で勝って、少しでもプレッシャーをかけない形で玉村昇悟らにつないでほしいですね。

 床田寛樹、高橋昂也らも一軍に復帰して、會澤と組んだことで、これまでとはまた違う投球になっているように思います。チーム打率は依然12球団トップを推移するなど、プラス材料も多いので、まずはカード頭を取れる戦いを展開しながら流れに乗る。そして残り試合のなかで勝ちを増やしていけば、上位も見えてくるのではないかと思います。チーム状態は少しずつ上がっていると思いますし、最後まで諦めない戦いを展開し、そこに個人的なタイトルがついてくればなおいいですね。