10月27日、ロッテが楽天に敗れたことでオリックスが25年ぶりとなるリーグ優勝を果たした。

オリックスのヘッドコーチとして優勝に貢献した水本勝己氏。写真はカープ時代。

 オリックスは今季、代行監督を務めていた中島聡監督が正式に一軍監督に就任し、8人の新任コーチを迎えてスタートするなどフレッシュな顔ぶれでシーズンを迎えた。

 そのコーチ陣の中で、中嶋監督を近くで支え続けてきた1人が水本勝己ヘッドコーチだ。

 水本コーチは1989年ドラフト外でカープに入団。わずか2年で引退し一軍出場はなく、現役時代の実績はない。引退後はブルペン捕手を務め、黒田博樹、新井貴浩らの活躍も陰で支えてきた。

 コーチ業スタートは2007年。シーズン途中にブルペンコーチ補佐に就任してからだった。その後三軍統括コーチ、二軍バッテリーコーチを経た後、2016年からは二軍監督に抜擢された。

 二軍監督時代の2017年には26年ぶりのウエスタン・リーグ優勝、初のファーム日本一に導くなど、一軍に生きの良い若手選手を送り込みながらカープのリーグ3連覇に貢献してきた。

 そして今季、30年間在籍したカープを退団してオリックスのヘッドコーチに就任した。中嶋監督とはカープ二軍監督時代に監督として戦ってきた仲であり同学年でもある。

 ここでは、中嶋監督の参謀としてオリックス優勝を支えてきた水本コーチが、カープ二軍監督時代に語っていた指導論を改めて振り返る。(広島アスリートマガジン2018年4月号掲載分を再編集)

◆若手、ベテラン関係なく、手を抜くプレーはしてはいけない

 私の指導哲学はシンプルです。『良いことは良い。悪いことは悪い』です。

 若手だろうが、ベテランだろうが、野球選手ということに差はありません。ベテランだからといって、実績があるからといって手を抜くようなプレーは絶対にしてはいけないということです。

 新井貴浩や、黒田博樹という人間が、なぜ選手たちのリスペクトを集めるのか? それはやはり、野球に対する真摯な姿勢を周りの選手たちが見ているということです。

 人間誰しも弱いですから、ダメと分かっていることでも楽な方にいってしまうものです。そういう時に、きちんと指導者として注意をしていきたいと思っています。それはその選手個人のことを思ってという面もありますが、そうした態度がチーム全体に蔓延してしまうことが怖いからです。

 二軍監督は選手とのコミュニケーションはもちろん、コーチともしっかりとコミュニケーションをとっていかなければいけません。二軍のことについては、私が最終的に判断を下す訳ですからそこに大きな責任感も感じます。

 悩むこともありますが、そういうときに考えるのはあえてシンプルに『選手たちをうまくする』ための最適な方法は何かということを考えます。結局突き詰めれば、そこが1番です。コーチの方々にもその芯を曲げてほしくないし、そこがしっかりしているからこそ、良い状況がつくりだせているのかもしれません。

 私の恩師である三村敏之元監督から、一軍監督の大変さ、苦労について話を聞いたことがあります。そのプレッシャーは想像できないぐらい壮絶なものだそうです。それを理解することは難しいかもしれませんが、なんとか助けられることがあれば助けたいと思います。

 自分にとって三村さんとの出会いは、大きなきっかけでした。そういう方々に出会ったことでさまざまな経験をすることができました。そういう意味では今の選手たちにも、たくさんの人と出会って、いろいろな経験をしてほしいと思っています。