東京都にあるスポーツ系の専門学校・東京スポーツ・レクリエーション専門学校(TSR)には、スポーツ科学科(4年制課程)が設置されている。アスレティックトレーナーやストレングス&コンディショニングコーチを目指す2専攻の他、スポーツアナリストを目指す専攻を含めた、1学科3専攻の学科である。

 既存のトレーナー資格や分析ソフトの修得に加え体力計測や分析、フィードバックといったスポーツ科学の視点(スポーツサイエンティスト)を持ち合わせたスポーツ業界の即戦力人材を育成することを目的としている。

 しかし、そんな中で、大学院で研究を続けるという進路を選ぶ学生も現れた。

 空飛ぶ箒に乗ってボールを追う―そんな映画をモチーフにしたスポーツをプレーする、奥貴光さん。彼はこの春、4年制の専門学校を卒業し、大学院へ進む。彼が学ぶのは魔法……でなく、バイオメカニクスだ。

 そんな彼が目指すのは、どんな疑問にも答えを導き出す“歩くトレーニングブック”のような存在だ。現場で培った指導スキルに、大学院で得る高度な理論を掛け合わせ、彼はスポーツ界にどんな変化をもたらそうとしているのか。魔法の箒をペンと論文に持ち替え、未踏の領域へ飛び立つ若きトレーナーの哲学に迫る。

東京スポーツ・レクリエーション専門学校を卒業後、早稲田大学大学院へと進んだ奥貴光さん

―高校卒業後に専門学校へ進もうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

「最初は専門学校に行くか大学に行くかで大きく悩んでいました 。自分は九州の出身なのですが、九州内の大学に進むよりも、『九州から出たい』という少しわがままな願望があったんです。ちょうど兄が就職のタイミングで東京に来ていたこともあり、深く考えずに東京に行きたいなと思ったのが始まりでした。

 ただ、九州の端の方だったので東京の大学の情報が全くなく、同じ高校のOBにも東京の大学に行った人がほとんどいませんでした。それに、自分は勉強を全然せずにスポーツばかりやっていて。父がもともと専門学校のスポーツ系の講師をしていた時期があったので、『スポーツ系に進む』と言えば父も了承してくれるだろうという、かなり安直な考えでした」

―そこからどうしてTSRを選んだのですか?

「ネットで東京の専門学校を調べた時に、最初に出てきたのがTSRでした。高校の先生たちからは『大学に行った方がいい』『4年制のところを出た方がいい』という意見をいただいていて、スポーツを学びつつ4年制の学科でもあるという『いいとこ取り』をして、TSRを選びました」

―入学後、そこからさらに「大学院で深く研究しよう」と思うようになったのはどんな出来事があったのでしょうか?

「最初は『研究をしたい』という動機よりも先に、早稲田大学のマイナースポーツをするインカレサークルに入ったことが大きいです。そこで理系の学部出身の先輩から大学院進学の話を聞いたり、実際に大学院へ進学された方とお会いしたりする中で、『学部の時代だけじゃ学べなかった学びや人間関係が構築できるよ』というお話をいただきました。

 学歴が全てではありませんが、そういった環境に身を置くことで、高い知識レベルや教養を持った方々と接することができると聞き、自分も大学院に行ってみたいなと思うようになりました。そこから、自分が在学中に力を入れて学んでいた『スポーツ科学』の分野で研究室探しを始めて、今回志望した早稲田大学の研究室にたどり着きました」

―ちなみに、そのマイナースポーツとはどんな競技ですか?

「『ハリー・ポッター』の作中に出てくる、箒に乗って空を飛びながらボールを追いかける『クィディッチ』というスポーツをご存知ですか?

 それを人間界の陸上で再現した『クアッドボール』というマイナースポーツがあって、日本で普及やプレーをしているサークルに入りました。箒に見立てた棒を股に挟んで、ラグビーみたいに走りながらボールを追うスポーツです」