私には「耐えて勝つ」という好きな言葉があります。しかし、カープファンのことを考えると、複雑な気持ちにもなる。ファンはもう耐え過ぎているんじゃないか、と思うわけです。すでに10数年優勝から遠ざかって、最近は7年連続でBクラスに低迷している。優勝争いにからんでも後半は失速というパターンだから、応援する側はつらいでしょう。

 選手がその気になるのはもちろん、監督とコーチ、フロントが一体となって、いかにグラウンドのなかで必死になって戦うか、それしか打開方法はないはずです。昔、選手に言われたことがあります。「グラウンドに入ったらウチの監督は鬼だ」って。それくらい、グラウンドの上では目の色を変えてやっていました。

 自分が選手だった頃を振り返っても、選手というのは試合が終わってからぐちぐち言っても聞きません。試合が始まってから終わるまでの間に、いかに必死になって相手と戦うか。だから僕は試合が始まったら、いっさいの妥協はしない。選手たちとケンカしながらやってきました。緊張感をみんなが持って、一つの塊になって相手チームにぶつかっていった。その気持ちがファンを沸かせると思うんです。

 ファンの方たちが何を期待して球場に足を運んでいるか。もちろん、野球を楽しみに来られている方も多いでしょう。でも、あの優勝という感激は、一度味わえばまた絶対に体験したいと思う。それを味わうために、声援を送ってくれるのではないでしょうか。

 初めて優勝したとき、本当に感激しました。市内をパレードしたときに、30万人以上のファンが手を振ってくれて。中には、おじいちゃんの遺影を掲げているファンの方もいました。「ようやく勝てた」って、遺影を掲げて喜んでくれたんです。あのシーンは、もう30年経つけど忘れられませんね。