サンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏がチームに対する愛情と情熱をぶつける全力コラム。今回のコラムでは、J通算500試合出場を達成し、史上5人目となるJ1通算100試合クリーンシート(無失点試合)も成し遂げたベテランGK・林卓人について取り上げる。

J通算500試合出場を達成した林卓人選手。年齢を重ねるごとにプレーに円熟味が増している。

◆努力と人間性で偉業を達成。己を磨き続ける名GK

 今シーズンはベテラン選手たちの存在も際立っています。青山敏弘、林卓人、柴崎晃誠、佐々木翔といった経験豊富な選手たちの技術や試合の動かし方には頭が下がります。

 その中でも特に称えたいのは、GKの林卓人です。柏戦以降、大迫敬介からレギュラーを奪い返し、J通算500試合出場を達成。さらに柏戦では史上5人目となるJ1通算100試合クリーンシート(無失点試合)を達成しました。

 Jの歴史に名前を刻む偉業を成し遂げることができたのは、林の努力と人間性があったからこそ。林のすごさは、例え試合出場がなかったとしても、毎試合、同じように準備を続けられることです。他の選手よりも早く練習場に来てアップをして、練習が終わった後は、一番最後までしっかりと体をケアしています。プロでも継続することは容易ではありません。

 また、大迫が試合に出ている時は、惜しみなくアドバイスを与えて、大迫に足りないものをどんどん吸収させていました。GKは一人しか試合に出場できない特別なポジションですから、ライバルのために行動することは、なかなかできることではありません。選手としての有能さはもちろん、人間性の素晴らしさを持ち合わせた選手だからこそ、ここまでの成績を残せたのだと思います。

 今シーズンの林を見て思うのですが、若い頃よりも体が絞られてシャープになっています。この姿からもトレーニングを怠っていないのが見てとれます。サンフレッチェは昔からGK王国で、J1リーグでレギュラーになれるレベルのGKが競い合い、相乗効果で強くなってきました。林から大迫へ、この広島の良き伝統を受け継いでいってほしいと思います。