2021年に、広島アスリートマガジンWEBに掲載したカープ選手の独占インタビューを取り上げる「編集部セレクション」。今回は、2年目の今季、白星がつかず苦しんだ時期はあったものの、1年を通して先発ローテで投げ続けた森下暢仁が、2021年開幕直後に話した言葉をお届けします。東京五輪の日本代表にも選ばれ、金メダル獲得に貢献した右腕が、今季抱いていた“ある想い”とは。

今季、チームで一番多くイニングを投げ、8勝をあげた森下暢仁。

◆任された場面で結果を出す。先発としてやることは同じ

─ルーキーイヤーの昨年は二桁勝利を達成し新人王を獲得されました。森下投手にとってどんな1年でしたか?

「まず思うのはファンのみなさんの存在の大きさを感じた1年だったことです。無観客試合から始まって、途中からお客さんが入っての試合開催となりましたが、ファンの方々の声援が力に変わるということを身をもって感じました。また、シーズン途中に一度離脱はしましたが、1年を通して一軍に帯同させてもらい、チームにもだんだんと溶け込むことができました。本当にいろんな経験をさせてもらった1年でした」

─昨年は8月以降に8勝を挙げる活躍。一気に勝ち星を伸ばしました。特に10月・11月に4勝を挙げ、その間の防御率は0・24の圧巻の成績でした。開幕当初とシーズン後半で投球スタイルや考え方の部分で変えたことはありますか?

「シーズン前半は、何も分からずとにかく必死に投げているだけでした。ただ、後半になるにつれ、同じチームとの対戦が増えていくなかで、前回の借りを返したい、負けたくないという気持ちと、新人王を獲りたいという気持ちが投球に影響を与えたのかなと思います。あとは、とにかくチームが勝てるために、しっかりと良い準備をして試合に臨むことは強く意識してやってきました」

─森下投手の投球内容を見るとストレートの比重が多い印象です。使い方で意識されていることを教えてください。

「ストレートでカウントを稼ぐことができるかが、その日の自分の調子を測るバロメーターの一つになっています。打者に怯まず向かっていくという意味でも大事な球だと思っています」

─昨年はドラフト1位で入団し、エースナンバーでもある背番号18を託されたこともあり、重圧も大きかったと思います。その重圧に打ち勝つためにどんな意識でシーズンを戦っていましたか?

「18番をいただいた責任感は感じていましたが、1位入団だからどうこうとは深く考えていませんでした。周りに大地さんや(九里)亜蓮さん、明治大の先輩でもある(野村)祐輔さんというすごい投手がいるので自分はその先輩たちについていこう、そんな気持ちでいました。ドラフト1位だから、18番だから自分が引っ張っていこうという気持ちはなかったですね。先輩方のおかげで、自分の仕事をすることに集中できました」

─昨年、新人王に選ばれただけに、今シーズンはどうしても“2年目のジンクス”という言葉がついて回りそうです。

「言われるのは仕方ありません。自分としては、できることをやって結果を残すことしか考えていません。ただ、結果がついてこなければそういうことを言われてしまうと思うので、昨年と同じように、とにかく良い準備をして登板に臨みたいです」

─1年目と同じく準備が大切だと?  

「そうですね。やるべきことは変わりませんから。やって結果が出なかったら単純に自分の力不足だと思うので、特に重圧は感じていません。自分ができることをやるだけです」

─今年は開幕投手候補として名前が挙げられる立場になりました。昨年以上にチームの主力投手として期待されるなかで、1年目とは違う意識の変化は生まれましたか?

「“任されたところで結果を出す”ことにこだわるのは、これまでと変わりません。やっぱり先発として投げて勝つことが求められていると思いますし、勝ち星が、自分にとってもチームにとっても良い影響をもたらしてくれると思っています」

─そういった意識の面で影響を受けている投手はいますか?

「(大瀬良)大地さんですね。カープで大地さんと出会い、大地さんを見て成長できた部分がありますし、いつか大地さんを超えたいという思いでやってきました。今季はとにかく、大地さんに置いていかれないようにやっていきたいと思っています」

─また今年は、大学日本代表でも一緒にプレーした栗林良吏投手がチームメートになりました。同じチームになったことで栗林投手から影響は受けていますか?

「やっぱり頼もしいですし、こうやって一緒にプレーできるとは思っていなかったので、カープのユニホームを着て同じ空間で野球ができるのはうれしいですね。頼りになる先輩がまた一人増えたと思っています」

─今年1年を通して貫き通したいテーマはありますか?

「“昨年活躍したのに今年はダメだった”と言われるのは嫌なので、やるべきことをやって試合に備えたいと思います。あとはケガで離脱することなく、シーズンを通して先発ローテーションで投げたいと思います」

※広島アスリートマガジン2021年5月号で行ったインタビューをもとに編集

◆プロフィール
森下暢仁 18
■もりした・まさと ■1997年8月25日生(24歳)■180cm/77kg   
■右投右打/投手 ■大分県出身 ■大分商高-明治大-広島(2019年ドラフト1位)