◆投げて支援「諦めないでほしい」

前編から続く
 楽天の則本昂大投手は「僕自身も決して裕福な家庭ではなかったので、やりたいことや習いたいことを自由に選択できなかった。子どもの力ではどうすることもできない理由で夢を諦めなくてはいけない事態を少しでも減らしたい」と支援することにした背景について語りました。

 高校や大学に進学した時には金銭的な理由で野球を続けられなかった友人の姿も見てきたそうで、野球を続けたくても続けられない球児たちの姿も思い描いていたのだと思います。

 ただ、CFCを支援することにしたのは、野球以外にやりたいことがある子どもの背中も押してあげたかったから。それぞれ一人ひとり、いろんな夢がある中で、このクーポンが勉強、スポーツ、音楽など、いろんな分野でも使えることも支援の決め手になったということでした。

 私が運営するNPO法人ベースボール・レジェンド・ファウンデーション(BLF)では、則本投手のこの素晴らしい取り組みを初年度からサポートさせていただいており、今夏にはプロ野球ファンを対象にした子どもの貧困のオンライン勉強会も開催しました。

 こうしてプロ野球選手の活動を通じて貧困の現状への理解が深まることも、選手が支援することの大きな意義だと改めて感じています。コロナ禍でなければ子どもたちを球場に招いて則本投手とふれ合ってもらったり、野球を観戦してその楽しさを知ってもらったりする企画も実施する予定だったのですが、それはコロナ禍が終わったらぜひ機会を作りたいと則本投手も言ってくれているので、今後さらに活動が広がっていくことを期待しています。

 この活動の話をする際、則本投手はいつも「夢を諦めないでほしい」と言います。子どもたちには「全力で夢に向かってチャレンジしてもらいたい」と。夢を叶えたプロ野球選手の言葉は、きっと子どもたちにとって大きな励みになるだろうと思います。

 現在、相対的貧困の環境にあり、クーポンの支援を必要としている子どもは全国に約173万人いるそうですが、全員にクーポンを行き渡らせるには 3000億円以上の資金が必要だそうで、今後は、寄付以外にも自治体との協働がカギとなるようです。

 プロ野球選手の力でこの取り組みがもっと認知され、全国のあらゆる地域でクーポンの供給が進むことを願うばかりです。

 

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施している。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。