いよいよ始まった2022年。昨年はカープ、サンフレッチェ共に、思うような結果を残せなかったが、若手が台頭するなど、未来への希望を抱かせてくれる戦いを見せてくれた。また、東京五輪が開催されるなど、スポーツがおおいに盛り上がった一年になったと言えるだろう。

 広島アスリートマガジンWEBでは、これまでカープやサンフレッチェをはじめ、広島のスポーツの魅力を伝えてきた。そこで、昨年特に反響の多かった記事を振り返り、2022年のスタートを切る。

 ここでは、未来のカープを支えるキーマンたちを発掘した担当スカウトに獲得の裏側を聞いた記事から、小園海斗の獲得エピソードをお届けする。担当した鞘師智也スカウトには、高校1年の小園が放った忘れられない一打があるという。(2021年11月10日掲載)

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◆両翼100メートルもある球場でフェンス直撃の三塁打

球団の高卒新人としては、19年ぶりとなる開幕一軍を勝ち取った小園海斗。

 <小園海斗獲得秘話(担当:鞘師スカウト)>

 報徳学園高は私の母校なので、今度活きのいい1年生が入学してくるという話は伝わってきていました。兵庫では名門高なので、それなりのレベルの選手は毎年入ってくるのですが、4月に入学したての小園を一目見たとき『レベルが違うな』と思いましたね。

 野手を見る時の基準にしている足の速さ・肩の強さ・野球センス、この3項目を全て高い水準でクリアしていました。一軍のショートでレギュラーを張れる期待を持たせてくれる選手は、高校生ではなかなか見ることができません。小園にはその希少価値を感じましたね。

 15歳でこれほどのプレーができるのであれば、プロに行くべき素材だと思いましたし、実際1年生からショートのレギュラーに定着しました。それも、選手がいないから仕方なく起用されているというわけではなく、実力で奪い取ったポジションでした。

 一番衝撃を受けたのは1年生の春、神戸国際大付高戦での一打です。プロ注目の左腕からフェンス直撃の三塁打を放ったのですが、高校に入りたての選手が、強豪校を相手に、両翼100メートルもある球場のフェンスに直撃する打球を放つシーンは、これまで見たことがありませんでした。

 現在の小園のプレースタイルは高校から変わっていません。長打も打てる打者なので、走攻守三拍子揃いトリプルスリーも達成された野村謙二郎さんのような選手になれると思っています。

 ユニホームを脱ぐと普通の高校生。少し調子ノリなところもありましたし、喜怒哀楽も表情に出やすい子でした。その部分に関しては、二軍の監督やコーチにしっかり指導してもらったことでプロ野球選手らしくなり、今年の活躍に結びついたと思いますね。

 2年目に一軍出場機会をわずかしか得られなかった悔しい経験も、見方を変えたら、良い機会になったのではないでしょうか。初めて見た時から『小園ならプロでもレギュラーをとれる』、そう思っていましたから、3年目の活躍は想像通りです。

●小園海斗(こぞの かいと)
2000年6月7日生(21歳)/兵庫県出身/178cm・84kg/右投左打/内野手/報徳学園高-広島
【2021年成績】113試合 打率.298 134安打 5本塁打 35打点 4盗塁

●鞘師智也(さやし ともや)
1980年5月6日生、大阪府出身。報徳学園高-東海大を経て、2002年ドラフト4巡目でカープに入団。現役時代は俊足巧打の外野手として活躍した。2010年限りで現役引退すると、翌2011年からスカウトに転身。現在は主に関西地区を担当し、岡田明丈、小園海斗、林晃汰らの獲得に成功した。今年のドラフトでは、黒原拓未(ドラフト1位)、森翔平(ドラフト2位)などを担当した。