◆9年ぶりに“主”の元に戻った背番号25

 新井の移籍でも途切れることがなかった『25』を、2009年に背負ったのが横浜(現DeNA)から移籍してきた石井琢朗だった。大洋、横浜では俊足巧打の内野手として活躍し、1998年には選手会長に就任。マシンガン打線の1番打者としてチーム38年ぶりのリーグ優勝、日本一に貢献した。2000安打も達成した球界を代表する内野手として知られている。

 石井は2009年にカープに移籍すると、2012年限りで現役を引退するまで4シーズンをプレー。引退後はカープのコーチに就任し、2016年には一軍打撃コーチとして25年ぶりのリーグ優勝に貢献。チーム打撃成績のほぼ全てで他チームを大きく上回ったのは、まさに石井の功績だろう。2017年シーズンをもってカープを退団し、以降もヤクルト、巨人でコーチを務めている。

 冒頭に述べた“ドラマ”は2016年に訪れた。背番号『25』が、8年ぶりにチームに復帰した新井貴浩の背中に戻ったのである。新井が自らの意志で阪神を自由契約となったタイミングで、右打ちの長距離打者を欲していた広島が獲得したのだ。

 復帰1年目の2015年、『25』はドラフト1位入団で3年目の髙橋大樹のものだったため、新井の背番号は『28』となった。だがこの年、チームトップの打率.275を記録するなどの活躍を見せ、翌2016年から『25』に復帰。その年には史上47人目となる通算2000安打、42人目となる通算300本塁打、41人目となる通算1000得点を相次いで達成。さらにリーグ優勝も果たし、本人にもファンにも忘れられない年となった。

 新井は古巣で有終の美を飾った後、2018年限りで現役を引退。現在はプロ野球解説者として、多方面で活躍している。そして背番号『25』は新井の引退とともに、初めて持ち主のない時期を過ごしている。新たなドラマを紡ぐ選手がまた現れる日を、『25』は静かに待っている。

【背番号『25』を背負った主なカープ選手】
阿南準郎(内野手/1960年-1967年)
木下富雄(内野手/1974年-1987年)
山田和利(内野手/1991年-1995年)
新井貴浩(内野手/1999年-2007年)
石井琢朗(内野手/2009年-2012)
髙橋大樹(外野手/2013年-2015年)
新井貴浩(内野手/2016年-2018)
※初めて背番号を付けたシーズンのポジションを表記。