2018年以来のAクラス、優勝を目指す今季のカープ。鈴木誠也が抜け、世代交代も叫ばれるなか、優勝に必要なものは何か。カープ投手陣を支え続けた元正捕手・石原慶幸氏は、世代にこだわらず、全員で勝ちにいく姿勢が重要と語る。今季のカープ躍進のカギを握るのは!?(後編)
※シーズン開幕前に取材

キャンプ中、若手を指導する姿が数多く見られた菊池。二遊間を組む小園海斗をはじめ、林晃汰や羽月隆太郎など、チームの将来を担う若手選手に向けて、スローイングや捕球など、自ら手本を見せながらアドバイスを送った。

◆世代に関係なく、全員野球で勝利をつかんでほしい

 正捕手争いについてふれていきます。佐々岡真司監督は「レギュラーは會澤翼」と明言しましたが、昨季は坂倉将吾や石原貴規が一軍で出場機会をつかみました。坂倉は一塁や三塁を守るなど、起用法に幅を持たせることもできそうなので、佐々岡監督が言うように、まずは會澤を軸にしながら、投手や相手チームとの相性を見て臨機応変に対応していくように思います。オープン戦で大瀬良とバッテリーを組んだ育成の持丸泰輝など、二軍にも虎視眈々と一軍を狙う存在がいますし、選手層は間違いなく厚みを増しているはずです。

 投打を含めて、カープは近年『世代交代』が進んでいると言われています。若い力の台頭はチームにとって喜ばしいことですが、その一方で會澤や菊池涼介といった実績のある選手も30代前半。彼らもまだまだやれる年齢です。むしろ、やってもらわなければいけない存在ですよね。

 キャンプでは菊池が若い選手に指導する姿も見られましたし、今季のカープは世代関係なく、全員で勝つんだという気持ちを持ってやっていかないといけません。菊池も〝自分が引っ張っていく〟という気持ちでやっているはずです。

 実は私自身、『世代交代』という言葉にはあまりピンときていません。若い選手の中にも経験を積んでいる選手はいますし、彼らはその経験を力に変えなければいけない立場。そんな彼らをまとめて引っ張っていくのが會澤や菊池といった存在です。もちろん、長野久義、松山竜平、田中広輔らもそうです。彼らの世代がまだまだ必死になって戦っていく。そうやってみんなでチームを引っ張っていくのがカープの戦い方だと思っています。

 今季、4年ぶりのAクラス、優勝を目指すためには、カープらしい『全員野球』が必要になってきます。鈴木誠也が抜けて、その代わりを探すのはなかなか難しいので、そこもみんなでカバーしていく。それをやらなければいけないし、やれるのがカープの強みです。投手も、先発なら1イニングでも多く、リリーフなら1点でも少なく。そういうことの積み重ねが、結果につながっていくはずです。カープの野球といえば機動力ですが、盗塁をするだけが機動力ではないですし、1プレー1プレーを大切に、全員が束になって戦うことができれば、必ず良い結果がついてくると思います。

◆石原慶幸(いしはら よしゆき)
1979年9月7日生、岐阜県出身。県立岐阜商高-東北福祉大-広島(2001年ドラフト4巡目)。入団2年目に一軍に定着すると、長年カープの主力捕手として活躍。2009年にはWBC日本代表に選出。2016年には正捕手として25年ぶりのリーグ優勝に貢献し、セ・リーグ最年長の37歳でゴールデン・グラブ賞を獲得。2020年限りで現役引退。現在は広島テレビプロ野球解説者として活動している。