◆ゴールドリボン運動とは?

 アメリカでは毎年9月1日に、全てのメジャー球団の選手と審判がゴールドリボンのモチーフを身につけて試合に臨みます。これは小児がんの子どもたちへの支援を呼びかけるメッセージ。世界小児がん月間である9月に、リーグをあげて行う啓発キャンペーンです。

 この取り組みを日本球界でいち早く表現した選手の一人が、西武の栗山巧選手です。栗山選手は2014年から小児がん患者とその家族の支援を行い、ゴールドリボンをあしらったリストバンドを着用して試合に出場することで、その啓発に尽力してきました。

 以前、栗山選手にインタビューした際、「プロ野球を通じて小児がんが世間からもっと注目されて、それを機に研究開発が少しでも進む動きができれば、将来的には多くの子どもが、より良い医療を受けられることになる」と語っていました。

 認定NPO法人ゴールドリボン・ネットワーク(GRN)によると、日本では年間2000~2500人くらいの子どもが小児がんを患っているそうです。しかし、国が指定する小児がん拠点病院は全国で15カ所のため、住む地域によっては病院までの交通費などの費用負担が重くなり、経済的に治療を受けることが困難な子どももいるそうです。また、治療が終わった後も、がんそのものや薬物療法、放射線治療などの影響によって晩期合併症を引き起こすケースが全体の半数弱もあり、一見、健康な人と変わらないようでもフォローが必要な人も多いと言います。

 ゴールドリボン・ネットワークでは、このような状況の患者に対して入院に必要な費用の補助(交通費・付添い家族の滞在費など)、小児がん経験者のための奨学金制度の整備、就労移行支援など様々なサポートを行っています。

 おそらく多くの人が、まだ小児がんのこのような実態についてあまり知らないのではないかと思います。でも、プロ野球選手がゴールドリボンを身につけることで「あれはどんな意味なのかな?」と興味を抱き、そこから理解や支援につながることもあるのではないでしょうか。

 今後、日本のプロ野球界でもこの取り組みが浸透し、ゆくゆくはピンクリボンのように球界をあげて盛り上げるキャンペーンになっていくことを期待します。

岡田真理(おかだ・まり)
フリーライターとしてプロ野球選手のインタビューやスポーツコラムを執筆する傍ら、BLF代表として選手参加のチャリティーイベントやひとり親家庭の球児支援を実施している。著書に「野球で、人を救おう」(角川書店)。