野手の花形とも呼ばれ、各球団も守備の名手を配置することが多い二遊間。カープでも、梵英心・東出輝裕の同学年二遊間や、タナキクの愛称で人気を博した田中広輔・菊池涼介らが名コンビと呼ばれファンの期待と信頼を集めた。

 2009年〜2012年までカープで選手として活躍した石井琢朗も、遊撃手として活躍した選手の1人だ。現役引退後はコーチとして田中広輔、菊池涼介らを育成し、カープ25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した。

 ここでは、現役時代の石井の独占インタビューを再編集して掲載する。カープ加入2年目を終えた2010年12月、チームの勝利にこだわり続ける男が、リーグ5位に終わったシーズンを振り返って語った言葉をお届けする。

引退後はコーチとしてカープに残り、主力選手の育成に尽力した。

◆「長くやれているのは、幸せなこと」

ー年齢の話をするのは恐縮ですが、2010年シーズン中に40歳を迎えられました。23年目という、途方もなく長い現役生活になっています。

「40歳という年齢を聞くと、長くやってるなということは思いますね。このオフに地元の後援会に行ってきたんですが、それは僕が学生服を着ていた頃に発足した会で、当時はみんな今の僕くらいの年齢でした。それが年を取っていらっしゃって……なんだかしみじみと『俺も年取ったな〜』と実感してしまいましたね(笑)」

ーこれほど長くやると思っていましたか?

「いや、思っていませんよ。10年やっただけで『この世界に10年もいれたよ』とうれしくてしょうがなかったですからね。なんだかんだいろいろありましたけど、好きな野球を仕事にできて、ここまで長くやれているのは幸せなことだと思います」

ープロ野球という厳しい世界で頑張れば、いいことがあるということでしょうか。

「ある程度実績を積めたのは大きいですよね。だからこそカープに来られたわけですし。本当に、こんな僕を拾ってくれた、手を差し伸べてくれたカープには感謝していますし、どうにかしたいという思いはありますね」

ー長く優勝から遠ざかっていますが、石井選手が新しい風を吹き込んでいるとも感じています。

「優勝したいですからね。お互い年寄りだけど、(豊田)清(現:西武・一軍投手コーチ)が入ってくればまた違う風を吹き込んでくれるだろうし、何か変わってくれるだろうと期待しています。実際、僕らはチームの勝ち負けしかモチベーションがないんです。ベンチにいればいるほど、監督やコーチの気持ちがよく分かるような気がしますね。気持ちというか、苦しさかな」

ーそばで見ている分、首脳陣の苦労を感じられているようですね。

「ずっとベンチから見ていると、監督やコーチがやりたいことというのは何となく分かってきますし、頭の中で戦術とかいろいろバリエーションが出てくるんです。ただ、指示したことを僕も含めた選手がやっているかと言えば、その2、30%くらいしかできていないと思いますよ。それでも自分は選手じゃないから何も手出しができないし、こうやってみんなストレスがたまっていくんだろうなと感じますね。まあ僕はまだ選手だから、こんな悠長なことが言えるのかもしれませんが」

ーやはり監督という職業には魅力がありますか?

「今はないですね。やっぱり選手が一番いいと思いますよ。昔、藤田(元司氏、元・巨人監督)さんが講演で仰っていましたが、選手というのは『コーチがいいな』と思い、コーチは『監督がいいな』と思うみたいなんです。ただ、監督は『選手がいいな』と思うんだそうです。考えた通りに選手が動いて勝てば気分がいいけど、動かなくて負けたらストレスになるでしょうからね。胃も壊すだろうし。そうでなくても、こんな失敗の多いスポーツは他にありません。7割失敗しても一流と呼ばれるんですからね」