ケガ予防に大切な股関節のトレーニング

連載を通して、これまで何度も柔軟性の大切さを伝えてきましたが、僕自身がそこに気づいたのは、じつは現役を引退したあとでした。高校球児だった頃は、体の柔らかさなんて気にしたこともありませんでしたし、指導者から柔軟性の大切さをアドバイスされたこともありませんでした。

股割り・腰割りの重要性に気づいたのは、オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)のトレーナーになってからです。この連載で、球速をアップさせるには柔軟性が必要だと紹介しましたが、その頃は、まだトレーニング方法として確立していませんでした。あくまでも個人の感覚ですが、『野球をするなら体が柔らかいほうが良いよね』というくらいのレベルで考えられていたと思います。

ただ、ケガをして離脱する選手を見ていくうちに、その原因が『股関節の動き』にあることに気づいてきました。つまり、股関節が固かったり、弱っていたため、効果的に体を使えておらず、故障やケガのリスクが上がっていたのです。

体を動かす時は、股関節の踏ん張りや動きが原動力の一つになりますし、柔軟な股関節を維持することで、万一のケガや故障を避けることができます。

MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー時代、そしてトレーニングジムを開設して、たくさんのプロ野球選手を見てきましたが、一流と言われる選手は体が柔らかいです。また、小学校・中学校・高校の選手で、体が固いまま大成した選手は記憶にありません。

野球上達に欠かせない柔軟性ですが、鍛えるには、筋トレと一緒でとにかく継続が大事です。毎日トレーニングを積み重ねることでしか、柔軟性を高めることはできません。これまで意識して柔軟性を鍛えていなかった方は、ぜひこの機会にトレーニングを始めてみてください。野球が上達し、ケガの予防にもつながるのでやらない手はありません。

なにから始めていいか分からない場合は、「Mac's Trainer Room」のYouTubeチャンネルで、「野球コンディショニング」股割メソッド完全版を公開していますので、こちらの動画をご覧ください。自宅でできるトレーニングを紹介しています。

6月19日からはプロ野球のペナントレースがスタートします。当分は無観客試合となるため、テレビ観戦が主となってくると思いますが、選手の股関節の使い方にも注目して見てみてはいかがでしょうか。新たな視点でプロ野球を楽しむことで、より野球の魅力を感じてもらえるはずです。

新たな視点と言えば、これからのプロ野球中継においては、取り扱う試合データ・選手データをもっと増やしてほしいと思っています。「Mac’s Trainer Room」では、ラプソードなどの最新機材を使って、科学的視点で、選手の体の状態や動きを分析し、練習メニューを考えていますが、投げたボールや打った球を「数値」で表すことで、様々な発見があります。

プロ野球投手が投げるボールの回転率、回転軸、回転効率、変化量など、取り扱うデータが増えることで、野球の奥深さを感じてもらえますし、そういったデータと一緒にプロ野球を楽しむことで、テレビ中継の魅力が高まるのではないでしょうか。

今回の感染症対策をきっかけに、これまでにないプロ野球中継のスタイルが生み出されるとうれしいですね。

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高島誠(たかしま・まこと)
広島県東広島市の西条町にある、野球専門のトレーニングジム「Mac's Trainer Room」の代表。オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナー経験があり、現在も数多くのプロ野球選手とトレーナー契約を結んでいる。趣味はパルクールとサウナで、サウナ・スパスペシャリストの資格も持つ。野球トレーニングのオンラインサロンの運営、【英語】x【身体作り】x【野球】がテーマの中学硬式野球チーム「東広島ポニー」に携わるなど、様々な分野で活躍。「Mac's Trainer Room」のYouTubeチャンネルでは、野球トレーニングに関する動画を公開中。
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