2022年シーズン、コンディション不良での一時離脱などありながらも、ここまで打線の核としてチームをけん引し続けた西川龍馬。いまやカープに欠かせない存在となった男も、プロ入り時は5位指名だった。

 ここでは、西川自身が語るドラフトの思い出をお届けする。社会人野球時代の西川が抱いていた、ドラフト会議、そして “スカウト” という存在への思いとは。

 前編はこちら。

2022シーズンはコンディション不良での一時離脱もあったものの、8月以降は戦列に復帰し打線をけん引した。

◆スカウトの目を意識する余裕もなかった社会人時代

─ドラフトといえばスカウトのみなさんの存在も大きいと思います。選手の立場からすると、スカウトのみなさんをどんな存在として捉えていたのでしょうか。

「高校の頃は、チームメートと『あそこのスカウトの人が来ているらしいよ』という会話をすることもありましたし、そういうときは『やばい、良いプレーをしないと』と思って力が入っていたりもしました。ただ、社会人になってからは、そうした意識はあまりなかったですね。大会でも、『今日はスカウトの人が来ているんだろうな』と感じることはありましたが、どこの球団かまでは分かりませんでしたし、『誰かを視察しに来ているんだろうな』とは思っても、誰を見ているのか? まで意識する余裕もなかった、というのが正直なところです。大会ともなるとトーナメント式の一発勝負で、負ければ敗退になってしまうので、とにかく目の前の試合に集中していました」

─では、2015年、プロ志望届を出した年のドラフト会議について改めて聞かせてください。当日は、どのような心境でその瞬間を待っていたのでしょうか。

「当日はそんなに緊張感もなく、先ほど言ったように『あ、今日ドラフトだな』くらいの感覚でした。僕自身はそんなに意識はしていなかったのですが、職場に行くと『今日ドラフトだな』と声をかけられて『そうですね。かかるといいですね』と答えたりして……僕よりも、周りの方々が意識していたように思います」

─事前に各球団の指名候補予想が報道されることもありますが、それ以前に、自分が指名されるかもしれないという予感はあるものですか?

「どこの球団が誰を指名するなど、確定した情報もありませんでしたから、当日になって監督に『指名があるかもしれないから、準備をしておけよ』と言われた程度ですね」

同じ王子から、4位・5位と相次いで指名された船越涼太と西川龍馬。

─2015年のドラフトでは、同じ王子の船越涼太選手(現・王子硬式野球部)が先にカープからドラフト4位指名を受けました。そのときの率直な思いを教えてください。

「そのときは王子の寮で、僕と、フナさん(船越)と、もう1人ドラフトにかかるかもしれないと言われていたチームメートの3人で集まっていました。4位でフナさんが呼ばれたときは、『おめでとうございます!』とみんなで声を掛けましたね。僕は4位指名が終わった時点で『今年の指名はないな』と感じたので、食事に行こうと思って自分の部屋で外出の用意をしていました。そのときに地元の友達から『カープから5位で指名されてるぞ!』と連絡が来て、そこで改めて自分でも確認して気がついた、という感じでした。

─そうだったんですね。船越選手と同じチームに指名されたときは、どのような心境でしたか?

「正直、ホッとしたという気持ちでした。やはり、知っている人が1人いるというのは心強いですよね。ドラフトにかかったうれしさ、フナさんと一緒でホッとした気持ち、安心感もありましたね。現在フナさんは王子の野球部に復帰して野球を続けていますが、お互いに時々連絡も取っています。先輩後輩の関係はいまも続いていますね(笑)」

─5位という指名順位に関しては、どういう思いを持たれていましたか?

「順位にはあまりこだわりもなかったですし、稲場監督にも『順位にかかわらずドラフトにかかれば行きたい』という話は伝えていました。まずはプロに入ることを目標にしていましたし、プロに進んでからが本当の勝負だと思っていたので、順位に関しては冷静に受け止めていました」

 =後編へ続く=

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