◆申し訳なさを覚えた指名漏れ。社会人で起きた心境の変化

─それでは、栗林投手自身のドラフトについて振り返っていただきたいと思います。まずは名城大時代のエピソードです。2018年のドラフト会議では、指名漏れを経験されました。自分の名前が呼ばれなかった時の、率直な思いをお聞かせください。

「もちろん悔しいという気持ちはありました。ただその時は、報道陣の方たちやチームメート、家族、中学時代の監督さんたちも集まってくださっていた中での指名漏れだったので、そうした方たちに対して申し訳ないという気持ちの方が強かったです。野球部の山内壮馬監督からは『まだチャンスはあるから、社会人に行ってもう一度頑張れ』と声をかけていただいたことを覚えています」

─大学卒業後はトヨタ自動車へ進み、2020年にはついにドラフト1位で指名を受けました。上位で指名があるかもしれない、という予感はあったのでしょうか。

「2020年のドラフトは、当日の朝、『広島が栗林を指名するかもしれない』という記事が出て、その話を聞いた時に、『もしかすると上位で指名があるかもしれない』と思うようになりました。もともと社会人に進んだ時も、1位か2位指名でなければプロには行かないと決めていて、上位で指名がかからなかったらトヨタで野球を続けようと思っていたんです。そんな背景もあって、どちらかというと大学時代よりも楽な気持ちで当日を迎えたと記憶しています。大学の時は、『絶対にプロに行きたい』と思っていたので、ドラフト当日が待ち遠しい気持ちでしたし、名前が呼ばれなかった時には悔しい思いもありました。ただ、社会人の時はドラフト会議の後に都市対抗野球も控えていましたし、もしドラフトにかからなくてもトヨタで野球を続けたいという思いもあったので、当日を意識したり、緊張したりしたという記憶はあまりありません」

くりばやし・りょうじ
■ 1996年7月9日生、愛知県出身
■ 178cm・85kg/右投右打/投手
■ 愛知黎明高-名城大-トヨタ自動車-広島 (2020年ドラフト1位)

 =後編へ続く=

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