1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。

 第2回目の特集は、カープ歴代監督のインタビューセレクション。

 広島東洋カープを牽引してきた歴代の監督たち。その手腕や采配の裏には、揺るぎない信念とカープへの深い愛情があった。ここでは、広島アスリートマガジンに過去掲載した監督たちのインタビュー、OBによる証言を厳選。名場面の裏側や選手との関係、勝利への哲学など、時代を超えて語られる言葉の数々をお届けする。

 それまでの監督とは一味もふた味も違い、大きなインパクトを与えた監督マーティ・ブラウン。3年間の在任期間で数々のエピソードを生み出し、今なお多くのファンの記憶に残り続けている。ここでは、カープを率いたブラウン監督の1年目のシーズンを『マーティ語録』とともに振り返る。

(『広島アスリートマガジン2006年11月号』掲載記事を再編集)

カープ、楽天で監督を務めた後、母国アメリカのマイナーリーグでも指揮を執った

◆意識改革は難しい。それでも、強いチームになるためには必要不可欠だった

ーブラウン監督1年目の今シーズン、特に活躍した選手の名前をあげるなら誰でしょうか。

「今年、誰が一番活躍してくれたと思いますか。そんな質問をよくみなさんから受けるのですが『ALL‐IN』の精神から言えばそれは全員、ということになります。その中でも黒田(博樹)は確かによくやりましたし、梵(英心)も新人とは思えない活躍をしてくれました。新井(貴浩)君もそうです。その新井君に『ホームランを打って欲しい』という、その願いというのがまだあるのです。『今日は大丈夫だろう』、と自信を持って考える日もあれば、またいつの間にか戻っていたりする。それがいつか『自信を持って、そうなるんだ』という確信にならないといけません」

ーメンタリティーの変革もあったのですね。

「そうですね。意識改革はとても難しいものです。私は選手時代も監督になってからも優勝の経験があります。優勝するチームは1年間、毎日球場に来て対戦相手や相手の投手をまったく気にしない、関係ないと思うものです。相手を意識せず普通に自分の仕事をすれば勝てる、と思うようになるのです。例えばそこで負けても『どうやって勝てたのかその理由は定かでないけど、まあ運もあってたまたま向こうが勝てたのだ』と考える訳です。『だから次はまた普通どおりやって勝とう』とね。相手の投手のことなど試合以外のことに気持ちがいってると連勝は続きません。逆に優勝するチームはそれができているから10連勝したりするのです。

 こうしたメンタル面で言えば私は開幕戦を迎えるにあたり『まあ、米国と比べても普通でそう変わらないだろう』と考えていました。ところがしばらく試合を重ねてもなかなか結果が出ない。これはどうしてだろうと考え、メンタル面に原因がある、と気づいた時には一人二人じゃなく、全員を教育していかなければいけないことを知ったのです。

 例えば『この場面で三振だけはいけない』、『ここですっぽ抜けを投げたらどうしよう』というふうに非常にマイナス思考で局面、局面に対処しようとしている選手が多い。そういう時にどういうことを考えて打席に入るべきか。結局は1球1球に対する集中力ということになるのですが、そのあたりのことはまた春のキャンプなどでじっくりやっていくつもりです」