◆連敗の中で感じたリーダーの不在

 にもかかわらず、自分たちが勝って当たり前という試合でも、「打たなきゃ」「打たなきゃ」と力が入りすぎてまったく打てない。9月11日からの巨人3連戦では3連敗を喰らうのだが、それなど非常に象徴的で、向こうは余裕があるため小山雄輝、笠原将生といった若くて経験のないピッチャーを使ってくる。彼らの方が開き直って良い投球を見せるのに対し、こちらは「勝たなきゃ」「勝たなきゃ」というプレッシャーに押しつぶされて、良いところなく負けてしまう……。

 つまりチームは前年とまったく同じ課題にぶつかったのだ。ここぞという試合で勝ち切れない、ここからまくらなければいけない秋以降の戦いで失速してしまう……。結局、2年連続で同じ壁にぶつかり、同じ壁に跳ね返された。それも2011年より期待感が高かっただけに、もっと惨めで、もっと劇的な失速になってしまった。

 そのとき僕が感じたのは、「そんなに簡単に事は進まないんだな」ということだった。前年の反省を受けて翌年すぐに結果が出るほど物事は単純ではなく、高みに到達するためにはコツコツ根気よくやっていくしかない。

 なすすべなく連敗を重ねる最中には、リーダーの不在を感じる瞬間が何度もあった。やはりチームには軸となる選手がいなかったし、本当のリーダーと呼べるキャラクターが欠けていた。この年、よく言われたのが、「ヤクルトには宮本慎也がいて、カープには宮本がいなかった」というセリフだったが、まさしく僕も同感だった。

 当時ヤクルトの監督だった小川淳司さんと話したとき「宮本の存在って大きいですね」と言ったら、「大きいよ。コーチや監督が言わなければいけないことを、選手の立場で言ってくれるのは本当に助かるんだ」という言葉が返ってきた。やはり先方も同じように思っているのかと思って、少し悔しかった。