このままじゃ終われない

 9月17日には自力でのCS出場消滅。最終成績は61勝71敗12分の4位。シーズンが終わったときは、とにかく自分を責めまくった。自分が変わらなきゃいけないという状況で自分を押し殺してやってきたのに、辿り着いたのがこの結果。僕は心の中で「これ以上どう変わればいいんだ?」「どうすればいいんだ?」と叫び続けた。

 それはファンや球団に対しての言葉ではない。自分自身に対して「俺に何をしろって言うんだ?」「これ以上、知恵は出ないよ」と絶望し、失望し、心底ヘコんだ気持ちになったのだ。

 振り返ってみればチームの成長は感じるものの、当時は「今年も優勝できなかった」という申し訳なさしかなかった。球場では毎試合ヤジられるし、新聞ではボロクソに書かれる。

 ついこの前、2005年の引退のときにはあんなに惜しまれて辞めたはずなのに、ちょっと経ったらどうしてこんなに扱いがひどいんだろう……そんなふうにも感じていた。もう叩かれるところがないくらい叩かれて、痛みも感じないほどだった。

 進退に関しては3年目の今年が最後というつもりでやってきたが、オーナーからは「良くなってきてるよ」という言葉をかけていただいた。その言葉を受けて4年目の契約を交わすことになった。

「来年こそ優勝したい」という気持ちとともに、胸の中では「ここまで一緒に戦ってきた選手たちと離れるのも寂しい」というチームへの愛着も持っていた。このままじゃ終われない。じゃあ、どうすればいいのか―。こうなったら、もっとくだけてやろう。もっともっとバカを見せていこう。

 2013年、僕はコーチから「いいんですか、監督!?」と言われることが増えていく。驚かれ、心配され、呆れられる機会が増えていくようになる。

●野村謙二郎 のむらけんじろう
1966年9月19日生、大分県出身。88年ドラフト1位でカープに入団。プロ2年目にショートの定位置を奪い盗塁王を獲得。翌91年は初の3割をマークし、2年連続盗塁王に輝くなどリーグ優勝に大きく貢献した。95年には打率.315、32本塁打、30盗塁でトリプルスリーを達成。2000安打を達成した05年限りで引退。10年にカープの一軍監督に就任し、積極的に若手を起用13年にはチームを初のクライマックス・シリーズに導いた。14年限りで監督を退任。現在はプロ野球解説者として活躍中。