2023年春季キャンプの終盤に「開幕は大瀬良」と、新井貴浩監督から5年連続となる開幕投手に指名された大瀬良大地。自身も開幕で投げることを前提にキャンプを過ごし調整を続け、4月7日の巨人戦では今季初勝利を飾った。いまやチームの大黒柱となった大瀬良が、エースとして成長していく過程において、改めて黒田博樹、前田健太というカープを背負った2人の大エースからの言葉を振り返った。(2020年広島アスリートマガジンWEB6月12日掲載)
◆『黒田さんならこういう風に考えるだろうな』
昨シーズン(2019年)、自身初の開幕投手を務め、今季も開幕投手に指名されるなど、エースとして大車輪の活躍が期待されている。今年のキャンプでは、例年以上に若手投手を引っ張る言動が目立っていたのも、エースとしての自覚だろう。
「年齢的にも投手陣を引っ張っていかなければならない立ち位置になってきているので、そこはグイグイやっていきたい部分ですね。1月までは個人個人がそれぞれの場所でトレーニングをしていますが、キャンプはみんなが集まって練習をします。そういったところで、僕がきっちりとした態度を示すことで『大瀬良さんがあれだけやっているのだから……』と何かを感じてくれる選手もいると思うんです。そういう雰囲気づくりを心がけました」
大瀬良はプロ入り以来、2人の偉大なエースの背中を見てきた。入団直後から絶対的エース・前田健太(現ツインズ)の背中を追い続け、プロ2年目の2015年からはかつてのエースである黒田博樹と2年間プレーを共にし、投手としてさまざまな影響を受けてきた。そんな2人と接した時間の中で数々のことを学び、自らの成長につなげてきた。
これまで順調にキャリアを積み上げてきた大瀬良は今、投手陣の柱となったからこそ、カープが誇る2人の偉大なエースの姿を思い返しながら、若手と接しているという。
「『この場面であればマエケンさん(前田健太)ならこういう風なことを思うだろうな』であるとか、『黒田さんならこういう風に考えるだろうな』と、現在の立場だからこそ思い出すことがあります。ただ、僕は僕で違った考え方をすることもありますし、マエケンさん、黒田さんから学んできたことを踏まえて、僕が上に立って感じることをミックスしながら良い形で若い選手に伝えていければと思っています」
現在のカープ投手陣を見渡せば、大瀬良よりも年下の投手が圧倒的に多くなってきた。かつてエースとしてカープを牽引した2人の背中を追いながら、背番号14は自らのエース道を歩んでいく。