◆野球人生で最も印象に残る監督とは・・・

─アマチュア時代も、さまざまな監督の元でプレーされてきていますが、印象に残る監督はどなたでしょうか?

 「やはり、一番影響を受けているのは恩師である、駒澤大時代の太田誠監督です。いつも発言させていただいていますが『球の心は正直者』という言葉は、現在も影響を受けています。『野球だけをやっていても野球は上手くならない。野球をやる前に社会人として日常生活での在り方をしっかりできない者は野球は上手くならない。だから、球は君の心を見ているよ』という意味です。『お天道様は見ている』という言葉もありますが、誰も見ていないところでも、どういう行動を取るかが大事です。この言葉はずっと大切にしています」

─では、プロ入り後で印象に残っている監督を聞かせてください。

 「特に印象に残っているのは山本浩二さんと、マーティ・ブラウンです。山本浩二さんが私を我慢して起用して、育ててくれなかったら、今の自分はありません。自分がかつて山本浩二さんに育てていただいたように、私もこれから監督として我慢しながら選手を育てていかなければならないと思っています。マーティについては、斬新でした。私自身、アマチュア時代から日本人監督の下でしかプレー経験がない中で、厳しさを学んでいました。マーティの野球はある程度の練習で体力を温存して、試合でいかに100%の力を発揮するか? というスタンスでした。『こんな練習方法もあるんだ』という今までにない考え方、野球観でした。そういう意味では山本浩二さん、マーティの考え方というのは、これから監督として参考にさせていただく部分があると思います」

─練習試合、オープン戦と実際に指揮した印象はいかがですか?
 「ゲームは常に動いているので、選手起用、戦術面など先の先のことまで考えていなければならないと改めて思いました。そこで藤井(彰人)ヘッドコーチの存在というのはすごく大きくて、本当に頼りになる存在だと感じました」

─現在の新井監督にとって『監督』とは、選手・チームにとってどんな存在であると考えますか?

 「『監督とはこうだ』というのは1つではなく、いろんな役割があると思います。ある時はチームのスポークスマンのような役割も求められると思いますし、演出家でなければいけないと思っています。グラウンドでプレーする、演じるのは演者である選手です。選手たちが良いパフォーマンスが出せるように、こちらは陰で支えてあげないといけません。監督はチームにとって、球団にとって、いろんな役割があると思います。私自身、今年のキャッチフレーズである『がががが が むしゃら』にあるように、がむしゃらに1年を駆け抜けようと思っています。感じたままを言葉にして行動しようと思っているので、その結果『こんな監督なんだ』というのは周囲が決めることだと思っています。とにかく、がむしゃらに、素直に、監督としてやっていきたいと思っています」

◆新井貴浩(あらいたかひろ)
1977年1月30日生、広島県出身。広島工高-駒澤大-広島(1998年ドラフト6位)-阪神(2008-2014年)-広島(2015-2018年現役引退)。ドラフト6位入団ながらも強靭な肉体で猛練習を乗り越え、4年目の2002年には初の全試合出場を果たし、28本塁打を記録してレギュラー定着。2005年には初の3割、43本のアーチで本塁打王に輝く。2007年オフにFAを行使して阪神移籍し、2011年には打点王を獲得。2014年オフに阪神を自由契約になると、広島に電撃復帰を果たす。復帰2年目の2016年に通算2000安打を達成するなど打線を牽引し、25年ぶりの優勝に大きく貢献。リーグ最年長でのMVPに輝いた。2017年以降は主に代打の切り札、精神的支柱としてチームを支え、3連覇に貢献。2018年限りで現役引退。その後はプロ野球解説者として活躍。2023年から広島一軍監督に就任。

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