思わず心を奪われる!カープの話題をゆる~くまったりと展開してくれる“オギリマワールド”。関東出身ながら中学生からカープファン。独自のタッチで描かれるイラストを交えたコラムでおなじみのオギリマサホが、広島アスリートマガジンWEBで、新たなカープの魅力を切り取る。今回スポットを当てたのはマツダスタジアムに現れる話題のキャラクター。「丸飲み系」マスコットを、オギリマ視点でゆる~く取り上げる!

◆ムッシャーはコロナが収束した後の世界の象徴!?

「カープのマスコットキャラクター」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。バットを構えたカープ坊や? あるいは青くてモサモサしたスラィリー?

 そもそも球団の顔となるマスコットには、シンボルに用いられるペットマークと、球場でパフォーマンスを行う着ぐるみとの二種があり、カープ坊やは前者で、スラィリーは後者となる。昭和の終わり頃の各球団のペットマークには、ロッテの「バブルガム坊や」や中日の「ドラ坊や」など「坊や」をモチーフにしたものが多かったが、現在では少年ペットマークはカープ坊やのみとなっており、1975年生まれのカープ坊やは12球団で最も古いペットマークとなっている。

 また、楽天の「クラッチ&クラッチ―ナ」など、ペットマークに用いられているキャラクターがそのまま着ぐるみになっている球団もあるが、カープ坊やは着ぐるみにはなっていない。そもそも球場に着ぐるみマスコットが初めて登場し始めたのは1979年、ヤクルトの「ヤー坊&スーちゃん」である。80年代にも「ブレ―ビー」(阪急)や「ギョロタン」(日本ハム)など強烈な印象を残す着ぐるみが登場するが、各球団が着ぐるみキャラを登場させるようになったのは90年代に入ってからであり、1995年生まれのスラィリーはこの流れの中で誕生したものだ。

 他球団のペットマークやマスコットが変更されたり引退したりする中、カープ坊やとスラィリーは双璧として長らくその地位を保ってきた。ところがここに、その均衡を破る者が突如として登場したのである。

 エキシビションマッチ中の7月27日、マツダスタジアムのバックスクリーンから謎の赤い生物がグラウンドに闖入した。制止に入った警備員を丸飲みし、衣服を吐き出すという暴挙に出て、どこへともなく去っていったのである。その後も7月30日、8月4日と登場してはボールボーイやカメラマンを丸飲みし、カープ公式ホームページにも「マツダスタジアムに出没中の生物について」( ※1 )という注意喚起のお知らせが発表された。

「ムッシャー」と命名されたこの生物を、新しいマスコットとして認識してもよいものかどうか、まだ判断がつかない。まずカバなのかクマなのか、何の生物なのかがわからない。また「丸飲み系」マスコットは海外のスポーツチームにも見られるとはいえ、いきなり周囲の人を食べてしまうとは、マスコットとして少々凶暴過ぎやしないだろうか。カープ坊や、スラィリーというマスコットがいる中で、なぜこの時期にムッシャーは登場したのだろう。

 そんな思いでムッシャーを眺めていると、何だか「羨ましい」という気持ちが芽生えてきた。というのも、コロナ禍の昨今、われわれは長らく人前であのように大口を開けてムシャムシャ食べることができていないからだ。そう考えるとムッシャーは、コロナが収束した後の世界の象徴なのではないだろうかとも思えてくる。

 今後、次第にムッシャーの詳細が明らかにされていくことになるだろう。カープ坊や、スラィリーとともに、ムッシャーが球団マスコットとしてどのような働きをしていくのか、見守っていきたいと思う。

※注1:広島東洋カープ公式サイト

https://www.carp.co.jp/news21/n-206.html

イラストレーター・オギリマサホの空想イラスト。「ムッシャー」が飲み込んでいるのは!?

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オギリマサホ
1976年東京都出身。イラストレーターとして雑誌や書籍等の挿絵を手掛けるかたわら、2018年より文春オンライン「文春野球コラム」でカープ担当となり独自の視点のイラストコラムを発表。著書に『斜め下からカープ論』(文春文庫)がある。