積極的に声を出しながら、実戦練習に取り組む荒木選手。公式戦再開に向け、日増しに状態も上がっている。

 5季ぶりのタイトル奪還を目指すサンフレッチェが、文句なしの滑り出しを見せた。今季初戦のルヴァン杯グループステージでは、横浜FCに2対0で快勝。続くJ1リーグ開幕戦も、鹿島を相手に3対0のクリーンシートでまとめてみせた。城福浩監督が掲げるショートカウンターからの効果的な得点はもとより、特筆すべきはサンフレッチェ最大のストロングポイントともいえるデュフェンス力だ。3バックの要として日毎に存在感を増す荒木隼人は、コロナ禍の影響が色濃く残る中でもグッドコンディションをキープし続けている。

 すべての悪夢はJ1リーグ開幕直後の2月26日から始まった。新型コロナウイルスの感染拡大を受け公式戦の開催延期が発表されると、4月3日にはリーグ再開に関する事項がすべて白紙に。緊急事態宣言が全国に拡大する2日前(4月14日)には、感染予防の観点からトップチームの活動も全面的に休止となった。誰もが経験したことのない未曾有の状況下で、荒木も例外なく難しい対応を強いられることになった。

「試合があるのとないのとでは、やはりモチベーションの部分で多少の違いが出てきます。活動休止になってからは、チームから『まずは感染しないこと。そして心のストレスを溜めないことを最優先にしてほしい』と言われていたので、体は動かしますけど、まずは感染しないことを意識しながら調整を続けていました」

 チームは指宿での一次キャンプから、例年以上の強度で調整を進めていた。そして誰一人、脱落することなくシーズン開幕を迎えると、選手たちはピッチ上で最高のパフォーマンスを披露した。しかしながら、そのわずか2カ月後にはボールすら蹴ることができない状況に追い込まれた。それでも荒木は可能な範囲で、自粛期間中もスキルアップを図っていた。

「自主練で近所を走っていましたし、心肺機能の部分はほぼ落ちていません。全体練習が再開(5月25日)した時点でも、80%くらいの状態は保っていたと思います。筋力的な部分、周りの選手との連係など若干落ちた部分はありますけど、チーム全体の状態も上がっているという感触はあります」