カープ在籍2年目となる秋山翔吾は、5月10日時点で、打率.383と打撃好調を維持している。ここでは、カープOB・笘篠賢治氏ならではの視点で、秋山についてを語ってもらった。
開幕から秋山翔吾が絶好調ですね。4月は4割に迫る好打率をマークし、5月に突入しても引き続き好調を維持し、3番打者として打線を支えています。
昨年は実戦不足、調整不足のままシーズン途中からカープに加入となりましたが、ファンからの期待は大きくプレッシャーもかかっていた思います。また、セ・リーグで初めて対戦する投手が多い中でのプレーは、いくら秋山といえども、結果を残すには厳しい状況だったと思います。
しかし、今季はキャンプからしっかりと調整し、秋山らしい活躍を見せてくれています。春季キャンプではタイミングのとり方などを試行錯誤していましたが、バットのヘッドの返し方なども今はとても良くなっています。この数字をキープし続けるというのは簡単なことではありませんが、首位打者を狙える選手ですので、このまま頑張ってもらいたいです。
私は文化放送の解説なども担当させていただいており、秋山のことは西武に入団した当時から追っていました。キャンプ取材にも毎年行っており、グラウンドでもよく話をしたものです。
当時の第一印象はバットに当てるのが上手な選手だな、という印象でした。そして、“顔で迎えにいっている”とか、“バットのヘッドをもう少し寝かせたほうが良い”などといった課題があったとしても、秋山はキャンプ中にその問題点をしっかりと解消していました。普通の選手であれば、シーズン中で実践しながら直したり、1年間かけて直す選手がいたりしますが、秋山は自分の弱点を意識して練習することに長けており、身につくのが早いと感じています。
ですので、源田壮亮(西武)などは秋山をかなり参考にしていたと思います。西武には栗山巧という左の好打者もおり、そのあたりの技術の継承はしっかりとされているはずです。現在はカープで同じ左打者の良い参考になっていると思います。投手への対応なども含めてチームへの貢献度は非常に大きいですよね。
一流の選手の条件には、自分のことだけでなく、人をよく見ているという共通点があると私は思います。
例えば落合博満(元中日)さんなどは本当に周りが見えている選手でした。というのも、私が現役時代、突然監督から呼ばれ、代走で出場することになりました。急だったのでスパイクではなくアップシューズのまま塁に行ったのですが、一塁を守っていた落合さんから「急に言われたんか? そうだよな、こんな場面じゃ普通は使わないもんな」と声を掛けられて、『やっぱり一流選手は細かい足元もちゃんと見ているんだな』と感心したものです。
そういう意味では、秋山も観察力が鋭い選手であり、話をしていてもよく見ているなと感心させられます。
今後は、交流戦で秋山がどれだけヒットを量産してくれるかが注目どころです。新しい顔ぶれもたくさんいると思いますが、パ・リーグの戦い方を知っている秋山がいることは、カープにとってとても優位であり、秋山をきっかけにどのようにカープが攻略していくのかも楽しみにしています。