今季プロ11年目、8月には29歳を迎えるカープ堂林翔太が、開幕から素晴らしい打撃を見せている。

 6月19日の開幕戦(DeNA戦・横浜)では「7番・一塁」で2014年3月28日以来、6年ぶりの開幕スタメンを勝ち取ると、この試合では無安打に終わったものの、翌日DeNA先発の右投手・ピープルズでも前日同様スタメン出場。5打数4安打と結果を残した。6月25日の巨人戦(東京ドーム)では右投手・桜井俊貴から2017年5月31日の西武戦以来となる一発。1121日ぶりとなる本塁打を記念したTシャツが球団から発売されるなど、日に日に存在感は増していった。

 さらに2試合ぶりスタメンとなった6月28日の中日戦(ナゴヤドーム)では、バックスクリーン右横に特大の2ラン。今季2度目の猛打賞を記録し、打率もリーグ4位の.414と上昇するなど、開幕7試合で4度のマルチ安打と堂林の勢いが止まらない。

6月29日現在、リーグ4位となる打率.414を記録し、好調を維持する堂林翔太選手

 堂林のプロ人生を振り返れば、一軍初出場となったプロ3年目の2012年、全試合に出場してチーム最多の14本塁打をマーク。両リーグワーストの失策、三振を記録するなど安定感は欠いたが、次代のスター候補としてファンの期待を一身に集めていた。ところが時折り見せる爆発力の一方で、シーズン通して好調をキープすることができず年々出場数は減少した。そして昨季は一軍定着後、最少となる28試合の出場にとどまり、打率も過去最低の.206、わずか7安打に終わった。

「足のケガで1カ月思うようにプレーできない時期もあり、なかなか一軍に呼んでもらえませんでした。正直なところ、何度か自分でも腐りそうになるときはありましたけど……そこをずっと堪えて、と言うとおかしいですけど、諦めるということはなかったので、『何か良いことがある』と思いながらずっと練習を続けていたシーズンでした」

 キャリアを重ねるごとに、当然ながら危機感が増していく。『たとえ打てなくても我慢して起用される』という時期はとうに過ぎた。現在の一軍に生き残るには守備力はもちろん、打力でアピールしなければ、熾烈を極めるポジション争いに生き残ることはできない。そんな状況下で昨季プロ10年目の節目を迎えていた堂林は完全に遅れをとっていた。