◆新井貴浩からの助言がヒントに

「毎年そうなのですが『もうチャンスも多くない』という思いがあるので『とにかくアピールするだけだ』という気持ちです。毎年そういうことを言っているんですけど、新監督になったというタイミングでもありますし、チャンスをつかむのは今季が本当にラストだと思って、これが良いきっかけになればと思っています」

 今季カープは佐々岡真司監督新体制となった。プロ入りから指揮官が変わるのはこれで二度目。再びチャンスをつかむには絶好の機会だ。春季キャンプでは出場機会の確率を少しでも上げるため、守備面では一塁を中心に外野など複数ポジションの練習をこなした。もはや、なりふり構ってはいられない。それがプロ11年目を迎える堂林の置かれた現状だった。

「主に一塁、外野を練習しましたが、意識を高く持ってこなせていると思います。希望しているポジションは特にないですし、とにかく『試合に出るためにやれることをやっていく』ということを最優先に考えながらやっていこうと思っています」

 そして最もアピールが必要な打撃面では、例年にも増して意識を高く持ち、キャンプ中から黙々とバットを振り続けてきた。そして2月後半、沖縄で行われたロッテとの練習試合後、取材に訪れていた新井貴浩氏からアドバイスを受けたことで堂林は打撃向上のきっかけをつかむことになる。

「『ちょっと体が速く開くんですよね』と相談して、『バットの角度をギリギリまでキープして最後に回転すること。そこをもう少し意識してみろ』と言われたんです。すぐにその練習の時からやってみるとちょっと感覚が良くなってきました。翌日阪神との練習試合があって結果も出て、自分でも感覚が良くて状態が上がっていきました」

 師と仰ぐ新井氏の助言はすぐに効果を発揮し、その後も堂林は好調を維持した。3月22日に行われた中日との練習試合ではマツダスタジアムのレフトスタンドへ豪快な一発を放ち、『今年の堂林は一味違う』というところを見せつけた。開幕延期となる中で、堂林は激しいレギュラーポジション争いに食らいつき続けていた。

◆勝負は右投手からの結果

 好調をキープし続けてきた堂林だが、開幕前は“対左投手相手の起用”が想定されていた。そこでの結果は絶対条件であり、本当の勝負はその先の『右投手からの結果』だった。

「左投手との対戦する試合機会が多いので、そこは目の色を変えてやっていかなければならないと思っています。そういう状況の中で右投手に対しても良い結果を残せれば、また使ってもらえると思うので、チャンスが少ない中でもそういうところでアピールしたいです」

 数少ないチャンスの中で、堂林は結果を残した。開幕を目前に控えた6月10日、阪神との練習試合では右投手・ガンケルからレフトスタンドへ放り込む満塁ホームランをマーク。キャンプ、練習試合からの猛アピールの末、課題の右投手からも結果を残し、開幕後も右投手を相手に結果を残し続けている。

 今、堂林に求められるのは一にも二にも結果だけ。プロ11年目の覚醒へ、背番号7は闘志を燃やし続けている。