2010年から5年間カープを率い、25年ぶりの優勝への礎を築いた野村謙二郎元監督。監督を退任した直後に出版された野村氏の著書『変わるしかなかった』から、その苦闘の日々を改めて振り返る。
まず監督就任会見のときに僕が言ったのは「目指すのはAクラスではなく優勝」ということだった。これまでチームは12年連続でBクラスに甘んじていた。そんな中で優勝という言葉を出すことに苦笑する人もいたが、僕はそこにはこだわった。「とりあえずAクラスで」という気持ちで臨んでいたら、いつまで経ってもこの状況からは抜け出せない。
そもそも僕が入団した頃のカープはAクラスが当たり前という状態だった。途中から引退まではずっとBクラス。つまり僕は良い時期と悪い時期の両方を経験してきた。そんな中でもう一度強いカープを復活させるためには、生半可なことをやっていたら不可能だと思った。優勝という目標を掲げ、ガムシャラに努力していく以外、這い上がる道はない―。
5年間の監督時代を終え、結果的に優勝はできなかったが、特にここ2~3年は選手の口から、「絶対、優勝します」という言葉が普通に出るようになった。それは僕にとってうれしいことだし、今から振り返れば感慨深いものがある。
僕が監督に就任した頃は「優勝します」なんて言える状況じゃなかったし、誰も本気で優勝なんて考えていなかった。多くの人が戦う前から諦めていたし、優勝なんて絶対無理だという雰囲気だった。でも今は違う。優勝を現実的に考えられるチームになったし、本気で優勝を目指すチームになってきた。