カープ・新井貴浩新監督が就任し、シーズンの半分が経過した。開幕直後から守護神・栗林良吏が思わぬ不調で抑え不在の不安がよぎる中、そのマウンドを任され、ここまで堂々のピッチングでチームを支え続けるのは、プロ7年目を迎えた矢崎拓也だ。

 ここでは、2022年秋季キャンプ視察を終えたOB・大野豊氏が、新生新井カープの印象を独自の視点で解説し、このときからすでに、矢崎拓也に注目していた記事を紹介しよう(2022年12月の掲載記事を再編集)※本文中のデータなどは全て当時もの。

プロ7年目で、抑えとして覚醒した矢崎拓也。首脳陣からの信頼も勝ち取った。

◆オフの期間で “自分に負けない強さ” をつくり上げてほしい

 2022年11月には秋季キャンプが開催され、私も18〜20日に視察に行ってきました。残念ながら雨が多かったのですが、ブルペンでは玉村昇悟、遠藤淳志、高橋昂也、ケムナ誠の投球を見ることができ、紅白戦も見ることができました。

 そんな中、私が特に注目したのは、来季プロ7年目を迎える矢崎拓也です。考え方が『大人になった』という印象がありますし、ダメな部分から逃げるのではなく、しっかりと受け入れ、どう対応していくかを考えられるようになっているのではないでしょうか。課題の一つである『制球力』も改善されています。彼は三振を取れる力強いピッチングができる投手ですし、ケガがないというのも強みですから、引き続き期待していきたいですね。

 紅白戦に登板した森翔平も、安定感抜群の投球を見せていました。森は緩急の使い方も上手いですし、球のキレもあります。自信を持って投げ切れる雰囲気も感じられましたから、彼もまた、非常に楽しみな選手であることは間違いありません。

 キャンプでは、新井監督もブルペンに入って直接投手に指導をしていました。選手の立場とすると、監督から声をかけられるとやはりうれしいものです。新井監督は冗談も言いつつ笑顔でコミュニケーションをしていくタイプですから、選手も心を開きやすいですよね。監督自らが野手目線のアドバイスをしてくれれば、選手としても頭に入ってきやすくなると思います。

 キャンプの雰囲気も、より一層明るく元気になってきたという印象がありました。選手1人ひとりが課題を見つけ、修正し、成長してさらに強くなるという循環ができやすい環境になりつつある印象です。監督が変わるということは選手にとってはチャンスですが、一方で、これまで起用されていた選手にとっては、安心できなくなる部分もあります。
 誰が監督になろうと、自分の力を発揮して結果を出し『監督に認めてもらうんだ』と考えて取り組むことが重要ですし、実際に選手たちも、そういう思いで日々取り組んでいるのだと思います。

 時代とともに、選手のオフの過ごし方も微妙に変わってきています。ただ、いつの時代もオフというのは、自分の課題を反省しつつ、どう向き合っていくかを冷静に考えられる時期だとも思います。しっかりと体をケアしつつ、自分自身と向き合いながら良い準備をして、臨んで欲しいですね。

 2023シーズンはチーム内での争いも、ますます激しくなっていくでしょう。競争が激しくなるほど、投手陣の質も上がっていくはずです。相手に負けないことはもちろん大切ですが、まずは自分に負けない強さと、自分自身を信じる気持ちをしっかりとつくり上げて欲しいと思います。