リーグ戦、カップ戦、天皇杯とも悔しい試合が続いたサンフレッチェ広島。なかなか浮上のきっかけをつかみ切れないなか、7月にはC大阪から加藤陸次樹が電撃移籍するなど、リーグ再開に向けチームは着々と動き始めている。

 ここではOB・吉田安孝氏が、6月のサンフレッチェを振り返る。苦しむチームに、今、必要なものとは。(記事中のデータはすべて7月6日の取材時点)

7月8日の鹿島戦で今季初得点をあげたエゼキエウ。柏好文は16日の横浜FC戦で同点弾につながる絶妙アシストを見せた。

◆負傷離脱、コンディション不良……今こそチームの真価が問われている

 引き続き、苦しい試合が続いているサンフレッチェ。連覇を目指したルヴァン杯も、グループステージで悔しい敗退となってしまいました。昨シーズンから今シーズンの序盤にかけては非常に良い状態が続いていましたが、勝負の世界は厳しいもので、いつまでも好調が続くとは限りません。良い時があれば悪い時もあるものですが、ここ数試合の戦いを見ていると、特に悪い部分が出てしまっていたように感じます。

 もちろん、ケガ人の離脱が響いているということもありますが、アクシデントがあるなかでも、今いるメンバーでどう改善していくかという部分が重要です。まさに今は、チームの真価が問われている時なのだと思います。

 リーグ戦、カップ戦を振り返ってみると、負けてしまった試合の大きな要因は、やはり得点力不足、決定力不足です。

 これは以前から言われていたことであり、永遠のテーマでもありますが、今シーズンも向き合っていかなければならない課題なのだろうと感じています。

 例えば6月11日の川崎戦(●1ー0)は、試合前半はほぼサンフレッチェのペースで展開していました。シュートチャンスもあったなかで点を取ることができなかったことは課題ですし、それに加えて、ここ数試合での失点の仕方も気がかりなポイントです。ここ数試合は、ビルドアップして、「これから攻撃を仕掛けていこう」というところで相手にボールを奪われる場面が目立っていました。前がかりになったところを突かれて相手にボールを奪われ、そのままシュートに持ち込まれてしまう……こうしたボールの失い方や、その後、もう一度ボールを奪い返すチャンスがあるにもかかわらず、奪い返すことができていない。そんなところも、課題の一つだと感じています。1対1の局面でのプレーの強度をもっと高めて、簡単に相手ボールにはさせないことが大切なのだと思います。

 川崎戦や横浜FM戦(6月24日、●0ー1)での失点シーンは、昨シーズンであれば広島が得意としていた得点パターンでした。

 どうしても、「攻めて行こう」という気持ちが強くなって体重が前にかかってしまうと、ボールを奪われて裏を取られた時には逆に置き去りにされてしまうというリスクがあります。それだけに、1対1の局面、球際、そしてルーズボールをいかに自分たちのボールにできるかという部分は非常に重要ですし、そこがうまく機能できていない点が、試合全体に響いてしまっているのではないかと感じられた連敗でした。

 
広島アスリートマガジン8月号は、「追悼特別特集 北別府 学 ありがとう 20世紀最後の200勝投手」カープが誇る大エース北別府学氏が残した偉業の数々を振り返ります。またサンフレッチェからは、存在感を増す広島3年目のDF住吉ジェラニレショーン選手が独占インタビューに登場してくれました!