各球団のライバルたちと息詰まる投手戦を演じ、カープに数多くの勝利をもたらしてきたエースたち。ここでは初優勝以降、広島投手陣の柱として責任を背負いマウンドで力投してきた日本人エースの軌跡を振り返る。

エースとして広島を支えた前田健太

■ミスターパーフェクト、外木場義郎(在籍:1965〜1979)

【通算成績】445試合、131勝138敗3S、防御率2.88
プロ初勝利がノーヒットノーランという異次元の大投手。初優勝以前、万年Bクラスに甘んじていた時代に計3度のノーヒットノーラン(内ひとつは完全試合)を記録し、孤軍奮闘した。史上初のAクラス入りを果たした1968年から初優勝を果たした1975年にかけては、8度にわたり二桁勝利を達成している。

■独特フォームで真っ向勝負! 池谷公二郎(在籍:1974〜1985)

【通算成績】325試合、103勝84敗10S、防御率4.13
プロ1年目から一軍に定着し、古葉監督が就任した2年目は先発の柱として18勝を挙げて、大車輪の活躍を見せた。チームがリーグ初優勝を果たした1975年から4年連続で200投球回超えとフル稼働し、3度のリーグ優勝、2度の日本一に大きく貢献している。北別府学、山根和夫らと共に、カープの第一次黄金期を築き上げた。

■七色の変化球を駆使、大野豊(在籍:1977〜1998)

【通算成績】 707試合、148勝100敗138S、防御率2.90
現役22年間は先発、中継ぎ、抑えとフル回転し100勝100セーブを達成。1980年代は先発として北別府、川口らと共にカープ投手王国を支え続けた。41歳で最優秀防御率のタイトルを獲得するなど、引退間際までエースの仕事を全う。特徴的な投球フォームは今もカープファンの心に残っている。

■“荒れ球”の奪三振王・川口和久(在籍:1981〜1994)

【通算成績】 435試合、139勝135敗4S、防御率3.38
キレのある直球を武器に、昭和後期から平成初期にかけて活躍した左腕。制球力にやや難があったとはいえ、それが適度な荒れ球となり打者を幻惑。通算2092個(歴代17位)という数字が示すように、長年にわたり三振の山を築いていった。完投能力も高く、大野と共に左腕のエースとして投手王国を形成。1986年から6年連続二桁勝利を記録し、2度の優勝に貢献。

■元祖精密機械・北別府学(在籍:1976〜1994)

【通算成績】515試合、213勝141敗5S、防御率3.67
プロ2年目に先発ローテーションに定着。3年目の1978年から1988年まで、11年連続で二桁勝利を記録するなど二度の沢村賞にも輝いた。現役時代に残した通算213勝は歴代18位、先発勝利数200勝は歴代10位、通算完投数135は歴代35位の大記録。針の穴を通す制球力は精密機械と呼ばれ、投手王国のエースに君臨し続けた。

■驚異のタフネス右腕・佐々岡真司(在籍:1990〜2007)

【通算成績】570試合、138勝153敗106S、防御率3.58
プロ1年目からエースナンバーを背負い、先発、抑えでフル回転。離脱が少なく、引退までの全ての年で勝利を記録した。先発100勝、100セーブは江夏豊以来史上2人目の大記録。先発のみに専念すれば200勝到達は確実と言われた平成屈指の大エースだ。現在は監督という立場で、後輩にエース魂を注入している。

■ミスター完投の漢気右腕・黒田博樹(在籍:1990〜2007、2015〜2016)

【日米通算成績】533試合、203勝184敗1S、防御率3.51
通算6度の最多完投を誇る“ミスター完投”は、低迷期の2000年代の投手陣を気迫溢れる投球で牽引した。2007年オフに米大リーグに移籍したが、2014年オフにカープに電撃復帰する“漢気”を見せた。投手陣の精神的支柱として2016年、チームに25年ぶりの優勝をもたらし、同年現役を引退。現役時代の背番号『15』は、山本浩二の8、衣笠祥雄の3に次ぐ永久欠番となった。

■海を渡った天才投手・前田健太(在籍:2007〜2015)

【日米通算成績】 444試合、165勝123敗6S、防御率3.10
高卒2年目、前年まで佐々岡が背負っていたエースナンバー『18』を託された前田健太。耳目を集めた右腕は、その重圧を力に変えて9勝をマーク。『地位は人をつくる』を地で行く活躍で、エースの座を射止めてみせた。2015年オフにかねてからの夢であったメジャーリーグに挑戦。ドジャース、ツインズ、タイガースを経て現在はカブスとマイナー契約を結んでいる。

■投球術で打者を幻惑・野村祐輔(在籍:2012〜2024)

【通算成績】211試合、80勝64敗、防御率3.53
メジャー移籍した前田健太に代わり、16年はエースとしてチームを引っ張った。突出した数字は少ないが、プロ入り110試合目での通算50勝到達は、前田の122試合を上回る球団最速記録。また166試合目での1000投球回到達は、前田に次ぐ2番目のスピードだった。2024年限りで現役を引退。現在はカープ三軍投手コーチ兼アナリストを務める。

■令和の力投派・大瀬良大地(在籍:2014〜)

【通算成績】290試合、90勝75敗2S、防御率3.35
年を追うごとにエースの風格が増している大型右腕。新人王を獲得したルーキーイヤー以降はリリーフに甘んじる年もあったが、2018年に才能を開花。自己最多の15勝をあげる活躍で、3連覇に大きく貢献し自らの手でエースの称号を引き寄せた。2019年にはエースの条件でもある完投数で、両リーグトップの数字(6完投)を弾き出した。また、2019年から2023年まで、5シーズン連続で開幕投手を務めている。