中学硬式野球5団体の頂点を決める「1st エイジェックカップ」決勝戦が8月29日に阪神甲子園球場で開催された。試合は前日トーナメントを勝ち抜いたポニーリーグ代表のポニー佐賀ビクトリー、フレッシュリーグ代表の佐賀フィールドナインの同県対決となった。

「1st エイジェックカップ」の初代王者に輝いたポニーリーグ代表のポニー佐賀ビクトリーのメンバー

 試合は序盤3回まで、両チーム先発投手が素晴らしい投球を見せる投手戦となった。試合が動いたのは4回、ポニー佐賀ビクトリーが連打でつないで3点を先制した。その後、佐賀フィールドナインも2点を返して反撃したが、4対2でポニー佐賀ビクトリーが逃げ切り、見事「1st エイジェックカップ」初代王者に輝いた。

 この日は、前日同大会オープニングセレモニーに参加した福岡ソフトバンクホークス前監督の工藤公康氏も解説で球場を訪れていた。ここでは、中学球児たちが日本一を決める熱い戦いを見守った工藤氏の見解をお送りする。

◆新しい歴史の1ページが開かれた

ーエイジェックカップ決勝は、ポニーリーグ・ポニー佐賀ビクトリー、フレッシュリーグ・佐賀フィールドナインと佐賀県のチーム同士の対戦となりました。試合解説をされましたが、実際に試合をご覧になった印象はいかがですか?

 「率直にみんな上手いし、出来上がっているし、思っていた以上のレベルでした。私は守備を大事に考えていますが、今日の決勝戦もほとんどエラーもなく、送球ミスなどもありませんでした。選手のみなさんはもちろん、ここまでチームをつくり上げてきた監督、コーチの方々も素晴らしいと思いました」

ー決勝戦での印象的な場面はありましたか?

 「ポニー佐賀ビクトリーがつないで点を重ねた場面(4回表)ですね。とにかく打って打って、つないで得点を重ねていました。チームプレーというか、少しでも後ろにつなげようという気持ちですよね。日頃から監督・コーチの方々の指導、考え方であったり、積み重ねてきたものが、あの場面で発揮されたのではないかと思います」

優勝を果たした瞬間のポニー佐賀ビクトリー

ー試合は序盤、投手戦となりました。両チームの投手を見た印象はいかがですか?

 「それぞれ自分の持っているものをしっかり出していて、非常に良かったと思います。素晴らしい舞台での決勝戦ということで、緊張しないというのは難しいことです。それでも、両チームともにここまで勝ち抜いてきただけあって、冷静だったと思いますし、とにかくすべてを出し切ろうというピッチングに見えました。また四球が少ない試合でした。そこも素晴らしかったと思います」

ー素晴らしい守りもあった一戦でした。

 「しっかりとした指導の下で練習をしているのだと思います。1人ではなく、みんなで守っているわけですからね。そういう意識が投手にも浸透しているのだと感じました。そのなかで皆が自分の力を出し切った結果、良い守備につながったのだと思います」

ー高校野球の聖地である阪神甲子園球場での決勝戦でした。彼らがこの場所でプレーする意義をどのように考えますか?

 「中学生で甲子園でプレーすることができたということは素晴らしいことです。『ここに来られた』『またここに来たい』という思いになってくれているでしょう。そして今回負けてしまった選手たちも『今度は高校に入って甲子園で勝ちたい』だとか、それぞれの“甲子園を目指したい”という目標ができて、改めて甲子園の素晴らしさが中学生球児のみなさんに伝わったと思います。私もそうでしたが、やはり甲子園球場は憧れの場所だと思いますね」

ー素晴らしい決勝戦を展開した両チームの選手にメッセージをお願いします。

 「本当に良い試合を見させていただきました。守ること、打つこと、すべてにおいて積極性がありました。チームのなかで自分の役割や、次へつなげる意識であったり、1つひとつ懸命にプレーする姿というのは、見ていて非常に良い気持ちになりました。一生懸命に今やっていることは、必ずその先の未来につながっていきます。自分たちの野球を信じて、より高いところを目指して頑張ってほしいです」

ー今後の中学硬式野球界にどのようなことを期待したいですか?

 「今回のエイジェックカップは5団体が力を合わせた新しい試みでした。この大会が実現して、新しい歴史の1ページが開かれたと思います。来年以降も続いていくように、このような交流がもっと進んでいき、子どもたちの可能性を広げてほしいです。やはり、子どもたちが生き生きと野球をプレーする姿は、見ている私たちもすごく新鮮に映ります。この世代がもっと活発になることで、野球界の未来が少しでも明るくなってほしいと思います」