2016〜2018年、リーグ3連覇を果たし『逆転のカープ』とも呼ばれていた2016〜2018年。ここでは主力として3連覇を経験した安部友裕氏に、当時と今シーズンのカープの戦いぶりを、6つのポイントで解説してもらった(取材は8月上旬)。

チーム全員の意識が打撃を変え、つなぐ打線が生まれた

◆【POINT01】打撃&攻撃力「派手さはないが、確実に点を取る攻撃」

連覇を果たした2017年はチーム打率.273、本塁打152と、どちらもリーグトップの成績。一方、今季はチーム打率.246(3位)、本塁打89(4位)で、迫力不足に欠ける感じもあるがチーム順位2位につけているポイントはそこではない⁉️ ※9月13日時点

「一番に言いたいのは、今シーズンは個々の意識付けがしっかりとできていることです。チームが勝つために、この場面では自分がどういった打撃をするべきかしっかりと考え、選手全員が打席に入っているのは、2017年と同じレベルで実現されています。
負け試合が増えてくると、どうしても個々の成績で一喜一憂してしまう傾向になってしまいますが、今シーズンは、誰もがチームが勝つための最良の選択をし、打席でそれを実践しています。1点の積み重ねが、結果として逆転につながるのですから、まず1点を取るために犠打や進塁打を確実に決める意識、それを最大級の評価している首脳陣。チーム全体の姿勢が2017年ととても似ていますよ。
本塁打は確かに減ってはいますが、その代わりに、1点を積み重ねて逆転をし、多くの僅差の試合を制していることは、これまでの戦いぶりを見てもよくわかります。派手さはないですが、相手が本当に嫌がる打撃は、シーズン終盤に向けても期待大です」

 

◆【POINT02】守り勝つ野球「僅差をものにする試合運び」

逆転をし、大差をつけて逃げ切る試合はもちろん、2点差以内で守り勝つ試合が多いのも2023年の特徴。なかには、驚きの守備固めをした試合も!

「緒方孝市監督の時代も『守り勝つ野球』を徹底し、僅差のゲームを確実にものにする野球を実践していました。今年のカープを見ると、それ以上に接戦を制しています。
特に複数のポジションを守れる選手が守備で活躍しています。7月の試合(7月24日・中日戦)では、守備固めで出た選手全員が、一番守備がうまいと言われる遊撃手で守備固めをした、奇跡的なシフトもありました(一塁・田中広輔、二塁・上本崇司、三塁・小園海斗、遊撃・矢野雅哉)。
もちろん、それぞれの練習量は倍以上になりますし、負担は大きいと思います。でも全員で守り勝つんだという強い意思が伺え、今年のカープを象徴しています」

 

◆【POINT03】機動力をフル活用「トライをし続け相手を揺さぶる」

『機動力野球復活』を掲げて臨んだ2023年。盗塁数は71個(1位)と、数字を見ても明らかに機動力を活かした試合運びをしているが……果たしてその効果は⁉️

「カープの場合は、足が速い選手が多いですからね。ですから勝ち試合が増えると、おのずと盗塁を狙う、足で揺さぶりをかけるといった機動力を活かした作戦を積極的に使うことができます。
盗塁を画策して、失敗することももちろんあります。ですが、積極的に足を使ってくるぞという印象を相手チームに植え付けることで、足を警戒されて甘い球が増えてくる。カープの各打者はつなぐ意識が強いですから、安打も出やすくなる。1本のヒットで1、3塁という場面をつくり出すことができる好循環が生まれます。
盗塁数だけでなく、数字では現れない機動力野球が、今年のカープでは実践されている印象です」

◆安部友裕(あべ・ともひろ)
1989年6月24日生、福岡県出身。福岡工大附高-広島(2007年高校生ドラフト1位)。一軍定着までに苦戦したものの、プロ9年目となる2016年に115試合に出場し、25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献。翌年2017年には初の規定打席に到達して打率3割を記録。リーグ3連覇に主力として貢献した。2022年限りで引退。通算成績は700試合、打率.264 443安打 25本塁打 160打点 49盗塁。