2023年、5月。雨が降りしきるピッチを退く背番号11の目には、光るものが浮かんでいた。ルヴァン杯決勝ぶりに見せた涙は、うれし涙ではなく、悔しさから滲んだもの。だが、全治不明のケガにより戦線離脱を余儀なくされた若きエースは、その3カ月後、2万人を超えるファン・サポーターの見守る前で、見事に復活を遂げてみせた。

 2023シーズン、プロ2年目にしてクラブにとって欠かせないピースとなった満田誠。その復帰までの道のりを辿る。クラブにとって欠かせないピースとなった満田誠。その復帰までの道のりを改めて辿る。(インタビューは2023年9月収録・全3回中編)

コーナーフラッグをつかむパフォーマンスに、スタジアムは大きな歓声に包まれた。

誰もが待ち望んだエースの復帰。劇的ゴールがチームを波に乗せた

ー2023年は5月に負傷し戦線離脱を余儀なくされました。復帰戦となったのは、8月13日の浦和戦(○2ー1)。スキッベ監督は事前にスタメン起用を明言されていましたが、満田選手自身がその情報を知ったのは、どのタイミングだったのでしょうか。

「試合2日前の練習の時だったと思います。(スタメンを)聞かされた時は、正直驚きました。復帰1試合目からスタメンで出るとは自分も思っていませんでしたし、体力的にも大丈夫かなという思いはありました。ただ『できるところまでで全力を出し切ってもらいたい』と声を掛けていただいたので、自分のできるところまでやりきるという心意気で試合に臨むことができました」

ー8月19日の川崎F戦(○3ー2)では、復帰後初ゴールを決めています。新加入のマルコス・ジュニオール選手のワンタッチパスに抜け出しての劇的な決勝ゴール。あの試合を改めて振り返っていただけますか。

「あのシーンは、抜け出して相手GKと1対1になった場面で、自分自身も頭のなかがすごくクリアに整理された状況でした。GKの位置とボールの位置、自分が打つシュートコースを冷静に考える余裕があったので、ボールを持った瞬間に『ここに打てば入る』という確信のようなものがありました。思っているよりクリアに考えて、行動に移すことができたのかなと思います」

ー復帰2戦目でのゴールとなりました。

「毎試合ゴールは狙っているので、それがああいった形でチームの勝利にもつながり個人的には上出来だと感じました。ゴールを決めたことよりも、チームが勝てたこと、90分以上試合に出ることができたことが、自分のなかでは大きかったと思っています」