中学生球児たちに役立つさまざまな練習やトレーニング法を、その道のスペシャリストに聞く本連載。さまざまなカテゴリーのチーム・選手の練習を取材し、取り組み方や、強さの秘訣などを紹介していく。 

 今回のテーマは、“オフシーズンのトレーニング“。各カテゴリーで大会がスタートする春に向け、冬の期間に行うトレーニングは体力、技術ともにレベルアップさせる重要な時期となる。

 本連載第3回目は、2023年に『A.R.E.』を達成したプロ野球・阪神タイガースに所属する村上頌樹投手のオフシーズンのトレ.ーニングを紹介する。

 

 村上投手は智弁学園高時代に選抜高校野球大会で優勝を果たすと、大学は東都の名門・東洋大に進学した。1年からマウンドに上がると新人賞を受賞。2年時には、当時『東洋大三羽烏』と呼ばれた甲斐野央投手(埼玉西武ライオンズ)・梅津晃大投手(中日ドラゴンズ)・上茶谷大河投手(横浜DeNAベイスターズ)らの活躍で登板機会が減るものの、3年時からはエース格に成長した。

 2020年にドラフト5位で阪神タイガースから指名を受けると、3年目の2023年に10勝をマークし、新人王、最優秀防御率賞、最優秀選手賞と3冠を達成するなど、大ブレークを果たした。昨シーズン大活躍を見せた村上投手は今オフ、同チームの青柳晃洋投手、岡留英貴投手とともに自主トレを行った。今回はある日の自主トレメニューに迫った。

 

 自主トレは、まずウォーミングアップからスタートする。ポールを用いた上半身のストレッチから始まり、股関節の柔軟、フロントプランク、サイドプランクと入念にアップを重ねていく。メニューも幅広いが驚くべきはその時間の長さ。およそ1時間から2時間をかけ入念に行い、「アップが1番大事。シーズン中もこの状態を維持できるように」と青柳投手も語る。

 投球に関する練習は“リリース時に力を入れる”ことを意識したトレーニングを行った。2人1組となりリリースのタイミングで力を込めたシャドーピッチングを実施。改めて自らのリリースポイントを意識し、ボールを強く押し込む意識を浸透させる。興味深いのは利き手でない腕でもシャドーピッチングを行っていた点だ。普段とは違う利き腕を振り抜くことで、体全体の柔軟性を養っていた。トレーニング中に村上投手は「左硬い!」と口にするなど、改めてこのトレーニングを通じて、自身の体と向き合っていた。

 ウォーミングアップ後はキャッチボール、ノックを実施し、その後はブルペン入りするなど、個々が課題に合わせた練習メニューに移る。夕方頃になるとウエートルームに移動し、ベンチプレスを始めとした器具を用いてフィジカルトレーニングをこなす。

 自主トレ後に村上投手は中学生球児に向けてこのようにメッセージをくれた。

 「自分が学生時代に1番大事にしていたのはキャッチボールです。丁寧に行うことでコントロールが磨かれます。キャッチボールの延長がピッチングだと思うので、1回1回のキャッチボールから丁寧に投げる意識をしてほしいです。今年の夏には第2回エイジェックカップがあると聞いているので、参加チームのみなさんにはぜひ決勝の舞台に立てるように頑張ってほしいです」

 2年連続で“師匠”である青柳投手と行なった村上投手のオフトレーニングは順調そのもの。今シーズンも阪神投手陣の大黒柱として連覇の原動力となる活躍が期待される。

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