2023年は離脱した栗林良吏に代わって守護神を務め、24セーブをマークしたカープ矢崎拓也。矢崎を語る上でよく耳にする『座禅』だが、実は「決して野球のために始めたわけではない」と語る。今シーズンもリリーフとして躍進を続ける矢崎。彼を支えるメンタリティとは。(全3回/3回目)

今季はここまで救援として14試合に登板。8ホールドを挙げている(5月21日時点)

◆チームの勝利こそが、喜びの最大公約数

─矢崎投手は以前から座禅を取り入れていますが、座禅の効果について、改めて聞かせてください。

「座禅を始めたのは、メンタルトレーナーの方から勧められ、禅の師匠を紹介してもらったのがきっかけでした。僕はあまり『成功したいから座禅をしたい』という話はせず、『人間として成長する、という部分で座禅をしたいです』ということで学ばせていただきました。ただ、試合前に座禅をすると僕が言っていたので、野球のために座禅をしていると思われがちかもしれないですね(笑)」

─プロ野球選手は、そのように見られてしまうかもしれませんね。

「どちらかというとそこは関係なく、結果的に良くなったという感じです。『悟りが欲しいなら座禅をしなさい』と言われて座るのが座禅の世界観なのですが、自分の中では『悟りを求めて座っている時点で悟れない』と思っていて、座った結果として悟りが得られることの方が大事じゃないかなと考えています。それを野球に置き換えてみたら、結果が出たというだけ。結果を求めて投げるのではなく、やるべきことを第一にやって、マウンドにいる体験自体に自分を100%表現したら結果がついてきたという感じですね。ピンチに陥ったことは変えられないけど、そこで何ができるかにフォーカスして今できることに100%集中する。そういうことができるようになりました」

─プロ8年目の今シーズン、矢崎選手の数字的な目標設定はありますか?

「実は、数字的な目標は設けていないんです。ここ2年は、『数字を求めない』と決めてやってきました。与えられた場所を淡々とやった結果、もちろん最後に良い数字が出ればいいとは思いますが、最初から数字を決めることはあまりしていません。とにかく目の前の試合に全力で挑むという感じですね」

─最後に、2024年はどういうシーズンにしたいと考えていますか?

「プロのスポーツですから、もちろん『チームが勝つこと』を求められています。ファンのみなさんも、僕ら選手みんなも、監督・コーチも、僕の周りにいる親しい人たちを含めて、やっぱりチームが勝つことが、みんな喜んでくれることだと思っています。自分がそこでがんばったことで、みんなに喜んでもらえるのがプロ野球選手という仕事の一番の醍醐味ですし、勝利に貢献したいという思いしかありません」