◆新幹線の中で迎えたリーグ優勝

 1980年の優勝で印象深いのは、広島への移動のための新幹線の中で優勝決定の瞬間を迎えたことです。赤いブレザーをみんなで着て優勝の瞬間を待っていました。報告を受けた瞬間は思わず拳を挙げましたが、すぐに冷静になったことも覚えています(苦笑)。さすがに胴上げはできませんでしたが、広島駅に到着した瞬間の熱気は今でも忘れることができません。

 ホームから階段を降りていくと、大観衆が待ち受けていて、もみくちゃにされましたね。尋常ではない数のファンが広島駅に集まり、その大群が一気に押し寄せたことで、とんでもない熱気になっていました。それぞれのシーズンで優勝した瞬間の喜び方はいろいろあると思うのですが、特殊な優勝の迎え方ということで、この時のことはよく覚えています。

 日本シリーズは前年同様、近鉄との対決となりましたが、相手も自分たちも前年と同じような選手たちが主力だっただけに、やりにくい印象はありませんでした。ただ私個人の話になると、まだ経験が浅く緊張していました。

 また当時は短期決戦が苦手なイメージがあったので正直日本シリーズは“蚊帳の外”という印象でした。もちろん連続日本一になってうれしくないわけありませんが、自分がグラウンドに立っていたわけではないので、複雑な気持ちを抱いていたのも正直なところです。

 先輩方がグラウンドで感情を爆発させ喜んでいるその様子を見たことで、『もっと自分は頑張らなくちゃいけない。そして絶対に次はあの場にいるようにする』と誓いました。その気持ちが後の自分の活躍につながった部分は少なからずあると思っているので、そういう意味で1980年の優勝は自分の中で、大きな出来事だったと思っています。

 1979、1980年の連覇を自分の中で改めて振り返ってみるとプロ野球の世界で生きていくための土台となったシーズンだったと思います。まだまだ当時の私は未熟な選手でしたが、強いチームの中で勝ち方を学ばせてもらった2年間だったと思います。