2年目を迎えた新井カープ。開幕直後から新外国人選手の離脱や、リーグワーストタイ記録に並ぶ4試合連続完封負けを喫するなど我慢の試合が続いている。しかし投手陣は好投を続け、打線も徐々に調子を上げ始めている。ここではカープOBの笘篠賢治氏が、カープの二遊間について語る。

 

◆慌てる必要はなし。今は戦力の底上げがメイン。

 菊池涼介と矢野雅哉の二遊間コンビが輝いています。5月7日の阪神戦では矢野がレフトのファールフライをフェンスにぶつかりながら背走キャッチすると、翌日はセカンドの菊池涼介が横っ飛びの難しい体勢から見事な送球を披露し併殺打を完成させました。その他にも数々のファインプレーを見せています。この二人の二遊間は12球団最強と言っても過言ではないでしょう。

 現時点(5月30日終了時点)でセ・パ合わせて3割打者が6人しかいない投高打低のプロ野球界。本来だったらベスト10まで3割打者がずらりと並んでいるはずが、投手が優位な時代ではそうもいきません。このような状況下においては、守りがしっかりしている必要があります。特にカープは投手陣が良いだけに、いかに失点を少なく僅差で競り勝つかという戦いをしないといけない中で、センターラインが重要です。そういった意味でも矢野が外せない存在になってきました。

 矢野の守備の持ち味は肩の強さですが、その肩に頼ることなく、しっかりと足を使って守っています。まずは捕る、そして自慢の肩でアウトにする。これまではそれだけで良かったのですが、さらにレベルアップするには、捕ってから次の送球へ移る意識が重要となり、遊撃手は攻める姿勢が必要です。そういった部分でも、菊池からの影響力は大きいはず。攻める足、そして捕ってから投げるまでの速さが今季は磨きがかかっています。同じ遊撃手では西武・源田壮亮が安定感と柔らかさのある守備でズバ抜けていましたが、守備範囲の広さを含めて、矢野がそこに変わる存在となる可能性を秘めています。

 カープの中では「レギュラー争い」という立場ではありますが、他球団からすればあの守備は脅威です。菊池のように「セカンドに飛んだらおしまい」というような雰囲気があります。チームが一発長打ではなく、守備から盛り上がるというのもカープらしい戦いになってくると思います。

 矢野にとっての課題は打撃面ですが、役割を理解した打ち方ができていて、叩きつける、転がすという意識はこれまでもありました。しかし、これまで上から叩きすぎていたスイングが、今季は地面と並行に振るレベルスイングになりました。その結果、打球の速いゴロや低いライナーが広角に打てています。この角度であれば、打球がヒットゾーンに入り、ファウルでも粘れるということも掴んできたのかもしれません。当然ヒットが出たほうが良いのですが、今はスイングの軌道をしっかりと身体に染み込ませる作業が大事になってきます。それを続けている中で徐々に結果もついてくることでしょう。

 シーズンは始まったばかりですが、このまま活躍を続けて菊池・矢野の二遊間コンビでゴールデン・グラブ賞を獲ってもらいたいものです。