チームが連覇を果たした2017年にブレイクを果たした薮田和樹が、当時「とても大きな存在」と語っていたのが佐々岡真司監督(当時二軍投手コーチ)。薮田の入団時から指導を行い、その成長を間近で見てきた佐々岡監督は、2017年当時どのような思いでその活躍を見ていたのか? 二軍投手コーチ時代の佐々岡監督の言葉を紹介する。
(『広島アスリートマガジン』2017年11月号掲載)

薮田の投球を見守る二軍投手コーチ時代の佐々岡真司監督

◆薮田が変わった瞬間

 薮田が入団してきて、最初に見た時からストレートの力強さに魅力を感じていました。大学時代、故障で公式戦は2試合しか登板していなかったようですが、二軍で順調に結果を残し、7月にプロ初登板を果たしました。しかし当時は制球難が課題で、すぐに二軍降格となり、私自身も薮田同様に悔しい気持ちになったことをよく覚えています。

 指導してきた中で印象的なのは、昨季彼が2年目の時です。春先から持ち味のストレートが走らず、調子が上がらない状態が続いていました。もともと薮田もマイペースなところがあり、常に右肩に不安を抱える状態でもあったので、なかなか投げ込みを行うこともできていませんでした。そんな中、二軍ソフトバンク戦での登板後、きつく叱った事がありました。もちろん二軍は若手にチャンスが与えられる場所です。ですが、あの時の薮田はマイペース調整の中で、「時間をください」、「まだ調整しています」という言葉が返ってきていました。私はその考え自体が甘いと感じたので、あえて厳しい言葉を投げかけました。薮田は泣きながら私の話を聞いていましたが、当然悔しい気持ちがあったと思います。