川村拓夢が移籍に向けチームを離脱するなど、選手の動向に注目の集まっているサンフレッチェ広島。そしてもう1人、新たなステージでの活躍を目指して海を渡る決断をした選手がいる。

 広島出身、Jrユース、ユースでサンフレッチェ広島のサッカーを学び、武者修行を経て広島に凱旋すると、2022年にはクラブ初となるカップタイトル獲得に貢献したMF・野津田岳人だ。

 ここでは、2023年に収録した野津田のインタビューを再編集してお届けする。エディオンスタジアムでのラストイヤーを前に、野津田が語った〝エディスタ愛〟とは。(「広島アスリートマガジン」2023年3月号掲載記事を再編集)

トップチーム昇格直後の野津田。当時の背番号は『24』だった

◆サンフレッチェの一員として、エディスタで試合ができたのは幸せなこと。

ー2022年シーズンは、リーグ戦、カップ戦合わせて4ゴールをあげました。すべてエディオンスタジアム広島(以下、エディスタ)でのゴールでしたが、ホームへの思いは特別なものがあるのでしょうか。

「僕自身、それまではアウェイで得点することが多いというイメージがあったのですが、2022年のゴールは全部エディスタで決めることができて、自分にとってもすごくうれしかったです。ホームで試合をする時は、今まで以上に楽しい気持ちというか……すごく幸せな気持ちでプレーできていたんです。改めて、広島の一員としてエディスタで試合ができるのは幸せだなと感じながらプレーできたシーズンでした。エディスタは小さい頃から見てきた場所でしたし、プロになってからは、ここでプレーしたいという気持ちを持ちながらも、いろいろなチームを転々としていた時期がありました。『もう一度エディスタで活躍したい』という思いがあったなかで広島に復帰して、試合にも出ることができていたので、すごくいろいろな思いを噛み締めながら戦っていたというか……慣れることはありませんでしたね」

ー「慣れることはなかった」とは、どういう意味でしょうか。

「エディスタでプレーすることに慣れることはなかったというか……。毎回、試合が始まる寸前に、ふと『ああ、ここでまたサッカーができるんだ』と思う瞬間があって、やっぱり自分は広島が好きなんだな、と感じていました。そういう意味では、エディスタのラストイヤーは、個人的には『すごく寂しい』という気持ちもありました」

ー小さい頃からエディオンスタジアムによく行かれていたとのことでしたが、観戦する時はどのあたりでご覧になっていましたか?

「小学生の頃は自由席が多かったですね。サンフレサポーターに混じって飛び跳ねながら応援したこともありましたし、相手のサポーターに混じって観ていたこともありました。試合もすごく楽しかったのですが、スタジアムそのものが楽しいという印象があって、スタジアムの中のいろいろな場所に行くのも楽しみだったんです。相手サポーターの雰囲気も感じてみたくて、いろいろなところを走り回っていたなあ、という記憶がありますね」