元NBAダンサーの小笠原礼子氏がこの春、次世代のダンサー育成を目的とした『エイジェックダンスアカデミー新宿校』(以下ADS新宿)を開校する。他のダンススクールとは一線を画すスクールから、将来のプロダンサー輩出を狙う。
小笠原氏が『チアダンス』を始めたのは28歳のときだった。NBAなどで活躍するダンサーの多くは20代前半であったことを考えると遅いスタートと言える。高校時代から取り組んだ『チアリーディング』と名前は似ているものの、ダンスの要素や演技構成など求められるスキルは大きく異なる。「『チアダンス』に転向した頃は、本当に下手で、(ここからプロになるなんて)出来るはずがない、その年齢からじゃ無理、などと言われたこともありました」と振り返るが、やるからには最高峰であるアメリカを目指したいという強い思いは揺らがなかった。
彼女がアメリカを目指したことには理由がある。小笠原氏が生まれ育ったのは青森県藤崎町。国内で最もポピュラーなリンゴである『ふじ』の名産地であり、その名の由来となった地域である。チアリーディングで日本一に輝いても、そのニュースは故郷に届かなかった。また、チアリーディングを始めたころ、東京のチームには必ずいるようなコーチが青森のチームにはいなかった。“誰にも負けない実績をつくり、指導者になる”。故郷のためにという思いが彼女を『世界』へと突き動かした。
実際にその思いは成就し、2020年にNBAデトロイト・ピストンズのダンサーオーディションに日本人初かつチーム最年長で合格し、NBAの舞台でダンサーとして活躍。さらに指導者になりたいという思いから始まった挑戦だけに、「次に挑戦する人たちにアウトプットしなければならない。自分だけの思い出で終わらせない」という思いもまたそこにはあった。
ADS新宿では、プロを目指すダンサーを対象に、オーディション対策や、実際にディレクターに指摘されたこと、小笠原氏が活動を通して『取り組んで良かったこと』など、極めて実践的な内容を盛り込むとのこと。
このタイミングで指導者に転身したことについて、「現役から遠ざかると忘れてしまうので、少しでも早く自分の経験を伝えたい。これまではただの経験者のおせっかいになってしまっていた部分もあるので、スクールとしてしっかり責任を持って伴走したい」と話した。
大人を対象にしたスクールは“楽しく踊る”“ストレス解消”などのポイントが打ち出されることが多いが、ADS新宿は異なる。「少しストレスを感じながら、ヒリヒリするような環境でしっかりレベルアップして、日米で活躍するダンサーを育てたいです」と、今後の取り組みへの思いを語った。
【プロフィール】
青森県藤崎町出身。高校でチアリーディングに出会い、大学卒業後は競技チアリーディングを学ぶため上京し、2008年に国内トップレベルのクラブチーム・デビルスに入部。全日本選手権大会で優勝し、2016年に競技チアからダンスへ転向。2017〜2020シーズンはBリーグのサンロッカーズ渋谷公式チアリーダー、サンロッカーガールズとして活動。その後2020年にNBAデトロイト・ピストンズのダンサーオーディションに日本人初かつチーム最年長で合格。更に2022年にはNBAユタ・ジャズのダンサーオーディションに日本人初かつ最年長で合格。NBAオールスターゲームにも出演した。