カープ球団を支える人たちは、どんな仕事をしているのか? 本記事ではさまざまな立場・場所からチームを支える人たちにスポットライトを当て、裏側の仕事について探っていく。今回は元カープ選手で現在球団職員として野球振興に携わる桒原樹さんに現在の仕事内容や、女子野球の取り組みについてなどを聞いた。

現在は女子野球の指導や普及活動に携わっているという桒原さん

球団職員として野球振興に貢献! 女子野球で紡ぐ第二の野球人生

 2015年から2021年まで7年間カープでプレーしましたが、現役引退後の2022年から球団職員として野球振興グループに所属し、女子野球をメインに子どもを対象とした野球指導を行っています。

 引退を決めた当時の思いを振り返ると、現役最後の2021年は、『悔いが残らないように』と取り組み、秋までやりきりましたが、次のシーズン契約を結ばない事を言われて引退を決意しました。

 その後は『地元の静岡に戻って……』と思っていたところ、球団から野球振興グループでの仕事で声をかけていただきました。女子野球についての知識はありませんでしたが、先輩である松本スカウトや、菊池(涼介)さん、庄司(隼人)さんたちにも相談しながら球団職員として、第二の野球人生を歩むことを決めました。

 現在の業務は、主に浅井樹さん(元カープ選手・コーチ)と、球団職員の方との3人で行っています。主に、小学生・中学生を対象とした女子野球の指導と、『カープ浅井打撃塾』の補助などです。その他は、チームの遠征の手配や、スケジュール調整を行うこともあります。

 まずは女子野球についてですが、現在広島県内で野球に取り組む小学生女子選手は、約100名と言われています。

 この子たちは各チームの男の子に混ざってプレーしています。そして広島県選抜チーム『ガールズ広島』として、毎年7月に行われる全国大会『NPBガールズトーナメント』での勝利を目指しています。僕はここで毎週土日のどちらかでコーチとして練習を指導し、練習試合などを見守っています。

 『カープ浅井打撃塾』では、平日の2日間、水曜日は軟式野球、木曜日は硬式野球の男子中学生に本格的な指導を行っています。僕から見ていても、浅井さんは現役コーチと同じくらいの内容を中学生に伝えているので、レベルが高いことは間違いないです。特に硬式野球の子どもたちは、高校野球の強豪校へ進学する選手も多くいます。

 今年で4年目になりますが、やはり子どもたちに野球を教えることは難しい面もあります。僕たちが当たり前だと思うことも、子どもたちにとっては、難しいことであり、初めてのことだったりします。

 例えば、僕たちがキャッチボールをするとしたら、胸のあたりや、グローブのあるところに球がきますが、それが当たり前ではありません。また、小学生に関しては、野球のルールをきちんと理解できていない子も多々います。

 指導者の中では、「プロの選手に指導するのが一番簡単」と言われることもあるそうです。もちろんプレーするカテゴリーは違いますが、プロは野球技術を持っていることが大前提での指導ですからね。年齢が下がるにつれて経験もありませんし、その子どもたちに“野球”を教えていくというのは、大変な作業だと感じています。浅井さんとは、『どうやって伝えていくか』、『子どもたちの目線に合わせて行う』ということを二人でよく話し、意識しながら行っています。

 だからこそ、この仕事をしていてうれしいと感じることがあります。僕たちのアドバイスを子どもたちが実践して、ヒットを打ったり、良いプレーができた瞬間です。よくある事だと思われがちですが、結果につながったことは純粋にうれしいですね。